リーダーに必要なのは「聞く力」。

 2000年代に入ってからの日本は、「リーダーシップ」という言葉が大流行だ。そのせいか、拙著『自分の頭で考えて動く部下の育て方』もアマゾンでなぜか「リーダーシップ」に分類されて売られている始末。

 こんなにリーダーシップがもてはやされるのには、小泉純一郎元首相による郵政改革や、カルロス・ゴーン社長による日産改革の成功が大きく影響しているように思う。どれだけ反対意見に遭おうとも、抵抗勢力には負けない。強いリーダーシップで突破していく。そんなリーダー像が、その頃から日本に根付いた。

 しかし巷では、部下の意見も、心あるアドバイスもみな反対意見、抵抗勢力と見なし、「リーダーとは孤独なものだ」と一人酔いしれながら突破しようとするリーダーが増えたように思う。周囲に耳を貸さないで、一人合点で突っ走ろうとするリーダーが今も増殖中だ。

 まるで、目を閉じて動画を見、耳を塞いで音楽を楽しみ、触りもしないで手触りを熱く語り、味見もしないで料理を語るのに似ている。見てください、聞いてください、触ってください、味わってみてくださいという現場の声に耳を傾けず、「強いリーダーシップ」で乗りきろうとする人が目につくようになったと感じる。そう感じる人は、私だけではないだろう。

トップダウンかボトムアップか

 上述したように、リーダーシップが流行したきっかけは小泉元首相だろう。抵抗勢力の反対意見に耳を貸さず、改革に突き進んだ姿が鮮烈で、あの頃から強いリーダーシップに憧れる人が増えたのは、間違いないところだと思う。しかし、小泉改革が成功を収めたのは、「国民の支持」があったことを軽視してはならないだろう。

 郵政改革が行われる前は、郵便局が地方の名士によって運営されているところも多いことから、地域によっては利用者に対し横柄な態度をとるところもあったようだ。国民の間に反感を覚える人が少なくなく、それが小泉改革を応援する声ともなっていた。