会社に勤めている現役の人でも、通勤に1時間半かかる場合、嫌だなと思うか、それとも本を読めてラッキーだなと思って生きるのかでは、ぜんぜん生活の充実度が違いますよね。何事もプラス思考で考えることが、いつまでも若くいられる要因の1つだということです。

食事はお腹が減っている状態で

──老けやすい人と老けにくい人がいるのは、精神面の影響が大きいのですね。身体的にはどのような要因が影響していますか。

渡辺 まず、遺伝的な要因があります。加えて睡眠や食事、運動といった生活習慣ですね。不規則な生活や運動不足などの悪習慣が老化を早めることは間違いのない事実とされています。

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授
ヘルスサイエンス・ラボ代表
博士 渡辺光博氏

──どんな生活習慣が望ましいのでしょうか。

渡辺 食事は腹八分目を心掛けることです。お腹が減っていないのに食べるのは避けたほうがいい。お腹がペコペコの状態で食事ができるようにするのが望ましいですね。1日だけ、もしくは週末だけの「プチ断食」をしてみるのも有効です。

──空腹の状態をつくることがなぜ大切なのですか。

渡辺 細胞内のメカニズムを説明しましょう。栄養が入ってこないと体は脂肪を燃やします。実はそのとき、同時に筋肉も溶かしています。筋肉のタンパクを分解してアミノ酸に戻し、血中に放出し、肝臓でアミノ酸から糖を作り、最後にブドウ糖を脳に送ります。生物は脳が最も重要なので、筋肉を捨ててでも脳を守るというわけです。