その仕事をカフェでするのは間違っている!

「カフェでの作業ははかどるか」の心理学(前篇)

2017.04.14(Fri)漆原 次郎
請園正敏(うけぞの・まさとし)氏。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神薬理研究部流動研究員。博士(心理学)。高校卒業後、米国の大学に留学。中退後、企業に就職しSE関連の仕事に従事。その後、明治学院大学へ。卒業後、大学院修士課程、博士課程へと進む。大学院生当時、NTTコミュニケーション科学基礎研究所にて実習生として科学技術振興機構の研究に従事。2016年、博士論文「社会的促進及び抑制の発生機序の解明と理論構築―Zajonc動因説を越えて―」で、博士号を取得。同年、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神薬理研究部に所属、現職に。

――どういった作業ははかどり、どういった作業は逆にはかどらないのでしょうか?

請園 単純だったり自身が十分に慣れていたりする作業ははかどりますが、逆に、複雑で十分に思考する必要があったり自身が慣れていなかったりする作業はかえってはかどらないということが、これまでの複数の研究から明らかになっています。

――冒頭にあった「社会的促進」とは、どんなものですか?

請園 誰かと作業を行うこと、または、誰かが存在することで、課題の遂行量が1人で行うときに比べて増加する現象を「社会的促進」といいます。

 でも、逆に、同じ状況でも課題の遂行量が減少する場合もあります。そちらは「社会的抑制」と呼んでいます。

 この研究分野の原型は1890年代後半、ノーマン・トレプレットという心理学者が、被験者の子どもに釣り竿のリールを回転させるとき、1人の状況と、隣の子どもと競わせる状況ではどちらかが早いかを調べた実験にあります。競わせる状況のほうが早くなったというのが結論です。

 その後、1920年代、ゴードン・オルポートという心理学者が、競わせなくても促進が起きるかを知ろうとして研究を行いました。被験者たちに「結果によって報酬が変わるものではない」と伝えて競争にならないことを配慮した上で、1人で課題を行わせる条件と、別の人と一緒に課題を行わせる条件で、成績を比べたのです。結果、計算や単語連想などほどんとの課題で、人と一緒に行ったほうが成績が高くなりました。一連の研究からオルポートは「社会的促進」を命名しました。

 さらに1930年代になると、これがカフェでの作業に近い状況だと思いますが、同じ作業をしていない別の人がいる状況や、さらに、他人に観察されている状況で、被験者に作業をさせて結果を見るような実験が行われました。そうした状況でも、オルポートの研究と同様に、課題をこなす量の増加が起きることが示されました。

 そのころ、動物でも社会的促進が生じるかの研究が行われ、社会的促進と社会的抑制は、昆虫や鳥類、げっ歯類など種を越えて生じることが分かってきました。2007年にはショウジョウバエでも解明されています。それほど強固に発現するものといえます。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る