おいしい店はどこ?江戸時代にもあったグルメガイド

料理書、ガイド本の発展で花開いた江戸の食文化

2017.01.06(Fri)佐藤 成美

「百珍もの」などの料理本が庶民に流行

 江戸時代中期の料理書は、大名家に仕える料理人など専門家を対象にしたものだった。

 1643年刊の『料理物語』(作者不詳)は料理を作る人の立場になった実用的な内容で、当時としては画期的なものだ。また『料理網目調味抄』(嘯夕軒宗堅著、1730年)は料理法や料理の心得、用語集が記されていた。そのほか『江戸料理集』(1674年)や『料理塩梅集』(塩見坂梅庵著、1668年)などがあったが、これらはいずれも専門家向けで料理の手順などを教えるようなものではなかった。

嘯夕軒宗堅著『料理網目調味抄』第五巻より。(所蔵:国立国会図書館)
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 一方、江戸時代後期に出版された料理本は、一般向けで分かりやすく、遊び心があるものだった。

 その端緒となった『豆腐百珍』(醒狂道人何必醇著、1782年)は、豆腐料理を100種類紹介したもの。「珍」とは「美味」を意味する。単に豆腐料理を集めただけでなく、豆腐料理を「尋常品」「通品」「佳品」「奇品」「妙品」「絶品」にランク分けしている。

「絶品」は「妙品よりさらに優れたもので、珍奇にたよらず豆腐の真の味を伝える、絶妙の調和がとれた料理」とのこと。「揚げ流し」「辛味豆腐」「礫(つぶて)田楽」「湯やっこ」「雪消飯(ゆきげめし)」「鞍馬豆腐」「真のうどん豆腐」の7種類が挙げられている。豆腐に関する歴史や関連事項なども記載され、読み物としても楽しめる。

醒狂道人何必醇著『豆腐百珍』の「絶品」のページ。(所蔵:国立国会図書館)
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 豆腐百珍の流行を追って、たまご、だいこん、ゆず、甘藷、はも、こんにゃくなどを題材にした百珍ものが次々に刊行された。

『万宝料理秘密箱』(器土堂著、1785年)は鶏と卵の料理集で、前編には29種類の鶏料理、後編の「卵百珍」には103種類の卵料理が載っている。また『諸国名産大根料理秘伝抄』(器土堂著、1785年)は、煮物、汁物、なます、漬物など大根料理が並ぶ。大根の飾り切りの方法が載っており、料理の遊び心を感じさせる。

『料理早指南』(醍醐山人著、1802年)には、「料理問答」という料理の疑問に答えるページがあった。

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