毎日のように空腹は訪れる。食事をする間隔があけば、お腹が空いてくる。そして、空腹に伴って聞こえてくるのが「ギュルルルルー」という、あの音だ。得も言われぬ感覚とともに腹が鳴る。
ひんぱんに電話がかかってくるなど、わいわいがやがやととした職場なら心配する必要はない。だが、昼食や夕食の前、静まり返った職場や、発言の多くない会議室では、自分のお腹から出てくる「ギュルルルー」という音が周囲の人たちに伝わりやしないかと気が気でなくなる(他の人の腹が鳴るのを聞いてしまうのも気まずい)。
しかし、お腹が鳴ることにも、やはり自然の摂理、あるいは生理とでもいえる必然性があるのだ。この音をどう捉えたらよいだろか。そして、どうしても避けたい人にとっての対処法はあるのだろうか。
胃の主な役割は2つ、貯蔵と消化
「腹が鳴る」というとき実際に音がしている場所は胃から小腸にかけてのあたり。「腹が鳴る」のは、胃や小腸が「ギュルルルー」という音の出るような運動をしている結果だ。この音は、体内の不随意運動、つまり自分の意志とは関係なく体が動いてしまうことによる産物といえる。
勝手に動く胃は、内臓として主に大きな2つの役割を担っている。食物の貯蔵と、食物の消化だ。
まず貯蔵。胃の先にある小腸が前の食物をまだ消化している最中だとしたら、後からやってきた食物を手前で待たせていたほうがよい。そこで、胃は一時的な食物の貯蔵庫の役割を果たす。
次に消化。これも胃の先にある小腸のことを考えてのことだ。小腸が栄養を吸収しやすくするため、胃は食物を消化する役割も果たす。そして胃が食物を消化するのは、次の2つの方法で行われる。
まず、強酸性の胃酸を出して、食物を粥状に柔らかくする化学的な処理方法がある。もう1つ、胃の中程から下側にかけてが波打つように動き、食物を胃の隣(小腸の手前)にある十二指腸へと送り出したり戻したりする物理的な処理方法もある。物理的な処理方法は「蠕動(ぜんどう)運動」といい、化学的処理方法に胃酸で粥状にした食物をさらに消化するために行われていると考えられている。