いよいよ師走。街角の商店ではさまざまな水産加工品に目が行く季節だ。私たちの身の回りにはたくさんの魚介類を加工した食品があるが、中には発酵を利用したものもある。「くさや」や「塩辛」などの独特の風味は、発酵により生まれたものなのだ。
魚介類は腐りやすい
海に囲まれた日本では、たくさんの魚介類が利用されている。魚介類は「鮮度が命」と言われるのは、裏を返せば鮮度が低下しやすいことを意味する。そのため、鮮度の低下を抑えて保存するために、塩漬けにしたり、干したり、あるいは練り製品にしたりと、さまざまな工夫がされている。
魚介類は死後、筋肉が硬くなる死後硬直が起こり、その後、次第にやわらかくなる自己消化が進み、腐敗する。「活きがいい」といわれるのは死後硬直までで、その後はどんどん鮮度が低下し「活きが悪くなる」。
このような変化が起こるのは、魚介類が持つ酵素と微生物の作用による。畜肉でも同じ変化は起こるが、水分が多く、組織が柔らかい魚介類のほうが、自己消化が早く進み、微生物が増殖しやすい。そのために鮮度が低下しやすいのである。
魚介類の加工食品には、この鮮度低下に関わる酵素や微生物の作用を積極的に利用して、保存性を向上させた上に、独自の風味を持たせたユニークなものがある。くさやや塩辛、魚醤油、ふなずしやいずしなど、水産発酵食品と呼ばれるものだ。これらは、いずれも独特の香りや風味をもち、クセになる。