今年あたりから、「ゲノム編集」という言葉が世間でよく聞かれるようになった。
一般書も出ている。『ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー』(NHK「ゲノム編集」取材班著、NHK出版)や『ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃』(小林雅一著、講談社現代新書)などだ。
共通するのは「衝撃」という言葉が使われていること。ゲノム編集の何がすごいのか。
『ゲノム編集の衝撃』に序文を寄せたノーベル賞受賞者の山中伸弥氏は、「技術として簡単であること。成功率が高いこと。いろいろな生物に適用できること。上記の3点が揃った生命科学技術というのは、これまでには他に存在しませんでした」と述べ、同氏が基礎研究に携わった25年間で「おそらく最も画期的な技術ではないか」としている。
よく引き合いに出されるのが遺伝子組換えだ。こちらは「生物の細胞から有用な性質を持つ遺伝子を取り出し、植物などの細胞の遺伝子に組み込み、新しい性質をもたせること」(厚生労働省パンフレット)。
遺伝子組換えの技術的な壁は、手間がかかることにあった。細胞内にある何万もの遺伝子の中から、狙いの遺伝子に偶然、外来遺伝子が入って作用するのを待つしかないのだ。