佳境に入ってきたNHK大河ドラマの「真田丸」。前回の放送では、関ケ原の戦いでの西軍の敗北を受けて、真田昌幸・信繁(幸村)親子が紀伊(現在の和歌山県)・高野山の入り口にあたる九度山に蟄居(ちっきょ)を命じられてしまいました。

 この後、昌幸の死を経て、いよいよ大阪冬の陣、夏の陣と怒涛のクライマックスへと突入していくことに。

 強い印象を残しながら亡くなった登場人物を惜しむ「ロス現象」や、あっさり終わってしまった関ヶ原のシーンなど、なにかと話題の真田丸。

 戦国武将の生きざまを描いたこれまでの大河ドラマとは一味違い、昌幸と信幸、信繁(幸村)親子を軸に、「家族」としての姿を描いたのが、人気の秘密と言われています。

アメリカとスウェーデンにあって日本にないもの

 ところで、NHKは「ファミリーヒストリー」という番組も放映しています。毎回著名なゲストを招いて、そのルーツを探るこの番組は、派手な演出はありませんが、堅実に視聴者を獲得しているようです。「家族」というものが改めて見直されている一例と言えるでしょう。

仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』(筒井淳也著、中央公論新社)

『仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』筒井淳也著、中央公論新社、税別780円

 先日、扶養控除の廃止が検討されているニュースが流れました。夫の扶養の範囲で働いていたパート主婦の制限を見直し、女性の社会進出をもっと積極的に推進していく政府の施策の1つです。

 確かに男性中心の労働環境の日本は、女性の働き方は制限されやすく、ひいては少子化に繋がっている側面は否定できません。それでは、かつてなかった少子高齢化の社会を迎え、「家族」の形はどのように変化すればよいのでしょうか。

 本書は、アメリカやドイツといった諸外国の豊富なデータを提示しながら、現在の日本社会を客観的に分析しています。

 面白いのは、福祉政策が厚く「大きな政府」の代表のスウェーデンと、国民保険が完備されておらず「小さな政府」の代表するアメリカとの対比。一見、両国は正反対の国と思われていますが、実は働く女性が多く、出生率も高いという点で、共通しているのです。

 それでは、両国にあって、日本にないものは何か。