唐津市はふるさと納税の仕組みを使って募った寄付金を唐津城の石垣の修復費用に充てている(写真:唐津市提供)

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返礼品の進化 豪華さから話題づくり、体験型商品へ

 返礼品のラインナップ次第で巨額の寄付金を集める「ふるさと納税」。かつてない武器を手に入れた自治体が考える返礼品は、ここへきて地域産品の豪華さや量を競うステージから次第に変化を遂げている。

 と言うのもどこの地域でも一次産品の豪華さを競っているため、他地域と差をつけることが非常に難しくなってきているのだ。

 そもそも農産物には数に限りがある。希少なものはすぐになくなってしまうし、量を確保するには1つの地域だけでは追いつかなくなる。数や量を確保するために、隣の村から調達したものを名前を変えて返礼品にしている自治体なども出てきている。

 そんなことから本来の地域のお礼の意味を問い直す声も出てきている。

 そんな中、さとふるをはじめとしたポータルサイトも地元地域が最も頭を悩ます返礼品の開発に関するサポートを始めている。最近のトレンドとしては、体験型の返礼品をラインナップに加える自治体が増えているという。

 「最近、話題になったのは、北海道江差町の町長が町を案内してくれるという特典付きのツアーです。江差町の照井誉之介町長は30歳と全国で一番若いことで知られるイケメン町長で、これを「売り」にして全国にアピールしようという企画です。町長自らお客さんを案内し、郷土料理をご馳走してくれるというレアな旅行企画なんです」(さとふる・高松俊和取締役)

 変わったところでは、「ヘリコプターで空中散歩」という返礼品も登場したという。

 神奈川県松田町が用意したもので、同町に隣町と協定を結んでいる防災ヘリの発着場があることから、これをヒントに作られた。富士山や相模湾、大島が望める空のコースを用意している。ポータルサイトで紹介されたところ、すぐに話題となり、すでに何組かの利用があったという。

 さとふるの高松氏は「地方には宝が山のように埋まっている」と話す。しかし地元の人たちはそれが当たり前になってしまっているため、なかなか発掘できないでいる。少し視点を変えたり、紹介するときのキャッチフレーズを変えるだけで、地域を代表するようなものになるというのだ。

 「北海道の白老町という町で、ある生産農家が作ったハンバーグを細々と地域のみで販売していたんです。地元ではその味が評判だったことから、それに目をつけたある町役場の職員がお礼品にしてはどうかと思いつき、それをサイトで紹介したところ、たちまち人気になり、あっという間に品切れになりました。地元にとっては当たり前のものでも、全国的に見ればとても魅力的なものが地方には多いんです」(さとふる・高松取締役)

 新潟の弥彦という場所にも、返礼品にまつわる面白い事例がある。

 弥彦はぶどうの産地として有名だ。返礼品にもぶどうを全面に打ち出していた。しかし、人気はいまひとつ。そこでサイトの担当者が「名前を変えてみたら・・・」と恐る恐る提案したところ・・・。

 いきなり申し込みが殺到し、村からぶどうがなくなってしまったというのだ。

 つけた名前が「王様のぶどう」だった。それまでは産地としての誇りから「弥彦のぶどう」と、そのままのネーミングで出していたが、全国的には山梨や長野、岡山のような知名度には及ばない。

 しかし、さすがに「王様のぶどう」では大きく出過ぎではないかと、地元の人たちは二の足を踏んでいたが、「ネットは見出しが命」なので、やってみましょうということになり、結果は爆発的ヒットにつながった。