ふるさと納税によって寄付されたお金で管理・運営されている「シーボルトの足湯」(嬉野市提供)

急に盛り上がり始めた背景

 この2年ほどで「ふるさと納税」が盛り上がりを見せている。総務省の調査結果によると、平成27年(2015年)度の「ふるさと納税」の実績は約1653億円で前年度に比べて4.3倍、納入件数は約726万件で前年度比3.8倍という急激な伸び方だ。

 「ふるさと納税」の制度がスタートしたのは、平成20年(2008年)。当初「ふるさと納税は広がらない」という意見が大半を占めていた。その予想通りスタートして数年は実績も100億円前後の横ばいで推移していた。

 ところが一昨年(平成26年)、いきなり389億円と急伸した後、翌年には一気に1653億円まで急上昇したのだ。

 この急激な上昇の要因は、大きく3つある。1つは、「ふるさとチョイス」、「さとふる」など、ふるさと納税ポータルサイトの機能が充実してきたことだ。これらのサイトでは、全国自治体の返礼品をわかりやすく紹介すると同時に、寄付金納付の決済機能まで備えていることで、面倒な手続きを不要にした。

 ポータルサイトが登場する前は、「ふるさと納税」を希望する人は、目当ての自治体に連絡して申込用紙を送ってもらい、必要事項と希望の返礼品を記入したら返送するといった面倒なやり取りと手続きが必要だった。

 またどの自治体がどのような返礼品を用意しているのかを知るには、各自治体のホームページを一つひとつ訪れて確認するしかなかったのだ。

 しかし、ポータルサイトが登場してサイト上で全国の返礼品の選択から決済までできるようになり、産直野菜のECサイトと同じ感覚で寄付ができるようになった。数ある返礼品の中から好みのものが見つかりやすく、また手続きが簡単になったことで、参加者が急激に増えてきたのである。

 2つ目の要因は、心理的なハードルが下がったことが挙げられる。

 「ふるさと納税」が始まった当初、「自分の出身地を応援する制度」というイメージが強かった。ところがポータルサイトが各地の返礼品をクローズアップし、それらを見やすく紹介したことで、縁もゆかりもない地域でも返礼品の好みで選んでいいという“気軽さ”を生んだ。

寄付者を格段に増やした昨年の制度改正

 寄付件数急増の3つ目の要因は、平成27年(2015年)4月に行われた「制度改正」である。実はこの制度改正にはポイントが2つある。

 制度改正の1つ目のポイントは、それまで5000円だった自己負担額が2000円に減額されると同時に、税額控除を受けられる納税枠が約2倍に引き上げられたことだ。これでより少ない負担で2倍の返礼品が受け取れるという、非常にお得な制度へと変わった。

 制度改正のもう1つのポイントは、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の導入である。

 従来の制度では、「ふるさと納税」をした人のうち、本来は確定申告をしなくていいサラリーマンであっても確定申告をしなければ税金の控除が受けられなかった(納税した先の自治体すべてから受領書をもらい、それを添付した確定申告書類を提出する作る必要があった)。

 しかしこの特例制度が設けられたことによって、寄付先が5団体以内なら確定申告をしなくても住民税の控除が受けられるようになったのだ(寄付先の自治体と現住所のある自治体とがやり取りをして、自動的に住民税から控除されるようになった)。

 確定申告の手間が減った分だけ、給与所得者などもともとは確定申告をしなくてもいい人が、参加しやすくなったというわけだ。