さらに、2日後には、内陸水運公社や港湾公社の職員ら約40人を前に、3時間にわたって教室で講義した松山さん。ビーカーに入った生コンクリートや水を前に並べ、実演を交えながら鉄筋コンクリートの特長や弱点、劣化の原因について解説したり、コンクリート構造物の維持管理方法について説明した。
「今後、急速に発展を遂げるミャンマーでは、新しいものを作っていくと同時に、今あるものをメンテナンスしながら大切に活用していく必要がある。そのためにも、メンテナンスに対する意識と技術力をもっと高めなければ」
ミャンマーの今後を見据え、指導にも力が入る松山さん。
それもそのはず、実は、こうした研修は、2013年にも一度行われたことがあり、その研修後に補修された箇所は、それ以前に補修された箇所と比べてひび割れや再劣化が明らかに少なく、学びの成果が生かされていることが、今回、明らかになったのだ。
彼らの真摯な姿に胸打たれた松山さんは、より多くの技術を伝えるべく、熱く指導をし続けた。
異例のインフラ支援
振り返ってみると、ナルギスが襲来した2008年前後の日本政府は、まだ軍事政権下にあったこの国に対し、「人道的なものに限定」した支援を細々と続けており、インフラ支援はほとんど行っていなかった。
それでも、ナルギスの被害があまりに大きかったことから、被災地域に住む多くの貧困層にとって主要な交通手段である内陸水運の機能を迅速に回復するため、日本は異例の判断でヤンゴン港および内陸水運施設の復旧を決定。
こうして始まった協力は、その後、さまざまな分野に広がっていった。
まず、軍政の影響で世界の技術水準から取り残されていたこの国の技術者たちに対し、日本から呼ばれた造船や溶接の専門家たちが、損傷を受けた船舶などを早急に修繕するために、手溶接や半自動溶接、あるいは腐食を防ぐ塗装の方法に関する実地指導を行った。
また、満潮時と干潮時の潮位差が大きく座礁のリスクが高いヤンゴン港内に航行の可否水域を示すセクターライトやリーディングライトを設置するとともに、操船技術の指導も行われた。