熱気が立ちこめる中、黙々とミシンを走らせる工員たち

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 トビラを開けると、もわっという熱気に全身が包まれた。ゴーッという重低音が床を伝わって足元から身体に駆け上がってくる。

 蛍光灯に明るく照らされた広い体育館のようなスペース一面に整然と並んだミシンに向かい、女性たちが黙々と布を縫い合わせている様子は、圧巻だ。機械が発する熱のせいだろうか、見ているだけでも少し汗ばんでくる。

 ここは、婦人服製造小売り大手のハニーズ(福島県いわき市)がヤンゴン郊外のミンガラドン工業団地内に今年3月に開設した第2工場。1000人の従業員が、毎日ここで中国から持ち込んだ生地でブラウスやジャケット、コートなどを仕立てている。

 工場の中へと進んでいくと、ミシンを使って縫製している女性たちの奥には、縫い目を確認したり、襟やポケット、ボタンなどを縫い付けたりする作業台も並んでいる。1枚の布が洋服に仕立てられるまでの作業工程が一目瞭然というわけだ。

 よく見ると、ピンクのブラウスに黒のロンジーというおそろいの制服姿の女性たちの中に、何人か黄緑色のブラウス姿の女性たちがいる。工場を運営する「HONEYS GARMENT INDUSTRYLTD.」の代表取締役を務める井口猛さんが、「彼らは各班のリーダーなのですよ」と教えてくれた。

 リーダーというだけあって、彼女たちは確かにそれぞれの班の女性たちに声を掛けたり、縫い目を確認しながら、全体に目を配っているようだ。きびきびと立ち動いている様子を眺めていると、縫製班のリーダーの1人と目が合った。

 それまでの真剣な表情がふっとやわらぎ、微笑んでくれたことが嬉しくて、思わず筆者も「がんばって」とジェスチャーを返す。

 下のフロアには、あらかじめ入力されたデータに従い自動で型紙を裁断する自動裁断機やアイロンなど、さらに大型の機械が並んでいた。上のフロアと比べると、男性の割合が高い。

 完成した洋服は、針がついたままになっていないか最終チェックを受けた後、袋詰めされて別室に運ばれる。第1工場で仕立てられる女性向けカラージーンズなどのボトムスとともに、すべてヤンゴン港から日本に輸出され、国内848店舗(2015年2月末時点)で販売されるのだ。