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地上100メートルの調査
「なんとかこのままもちこたえてほしい」――。
そんな一行の願いもむなしく、未明にいったん上がった雨は、8時半を回ったころから再びぽつぽつと車窓を叩いて降り始めた。
雨足はあっという間に強まり、9時過ぎにナウンチョー駅で車を降りた時には、お互いに声を張り上げないと聞こえないほど大粒の雨が、駅舎や地面をこれでもかと叩き付けていた。
身震いするほどひんやりした空気の中、作業着の上から撥水性のコートを羽織って長靴を履いた男性たちが、ヘルメットからしたたる雨越しに「見事に降られたね」と苦笑いしつつ、ホームで待機していた黄色の作業用列車に乗り込んでいく。
そこから草木をかきわけながら走ること30分あまり、突如として眼下に広がった景色に、思わず息をのんだ。
地表に落ちた雨が地表の熱によって再び気化しているのだろう、高さ100メートル 、全長690メートルの灰色のゴッティ橋が木々の深い緑に包まれた渓谷に凛と立ち、立ち込める白い霧の中へと続いていく様は、ただただ幻想的で荘厳だった。
橋のすぐ手前で停車した作業用列車から線路の上に降り立った一行が次々と渓谷を渡り始める。聞けば2010年まで兵庫県の山陰本線上で運用されていた余部鉄橋が4つすっぽり桁下に入る大きさだという。
1年前、たかだか水上10メートルほどのNo.13橋梁の上で足がすくんで動けなくなった記憶から腰が引けていた筆者も、置いていかれまいと決死の覚悟で足を踏み出す。
いざ歩き始めると、ゴッティ橋は枕木と枕木の間に鉄板が張られて真下が見えない分、足元を流れる川が丸見えだった1年前よりも恐怖を感じず、ほっとした。
それでも、隣の橋桁から下に伸びる長い橋脚が霧の合間に浮かび上がるたびに否応なく高さを思い知らされ、カメラを持つ手に力が入る。