日本コンサルタンツ(JIC)の高見満さんは、「適切な維持管理技術がないこの国では、寿命がきた橋梁のうち、18メートル以下のものは修理する代わりに直営の橋梁工場で新しい橋をつくって架け替えており、その数は50橋あまりに上る」と指摘。
「今回の協力は、日本の協力によって線路の改修や鉄道の近代化が進み、列車のスピードが上がる将来を見据えたもの」だと胸を張る。
MRで土木を担当するウー・ゾー・ミン・ウー部長も「つくるだけでなく維持管理の重要さを知った」と発言。今後2カ月かけて自分たちでも他の橋梁について同様の調査を行い訓練するという。
さらに同プロジェクトでは、線路や橋梁の補修作業が将来的にMRだけでは手が回らなくなることも見据え、維持管理業務を日本のように協力会社に委託する制度についても検討を開始している。
衝撃振動試験
一方、ヤンゴン~マンダレー間の幹線鉄道の近代化に向けて詳細設計調査を進めているYMDD調査団にとっても、鉄道橋梁は重要なテーマだ。
フェーズ1の対象区間(ヤンゴン~タウングー)には全部で238の橋が架かっている。
これらのうち、何橋を架け替え、何橋を改修するかは全体のコストを左右する問題であるため、調査団は詳細設計調査がスタートするとすぐに橋梁の健全度調査を開始し、1橋ずつ現状の把握作業を進めてきた(2015年1月号参照)。
8月26日、1年近くにおよぶ健全度調査の結果をまとめてMRに報告する会議が開かれた。3時間におよぶ協議を終えたオリエンタルコンサルタンツグローバルの藤吉昭彦・副総括は満足していた。
200橋は経済性と耐震性に優れたボックスカルバートに架け替え、残り38橋については改修して引き続き使用するか、改修が難しければ新設するという方針を提案し、おおむね認められたのだ。
藤吉さんが安堵の笑顔を見せたのには、理由がある。いざ健全度調査を始めてみると、ほとんどの橋でその判定に必要な個別の設計図面や耐久荷重などの基礎情報が残っておらず、日本のやり方は通用しないことが明らかになったのだ。
一時は頭を抱えた調査団だが、「ここまで来られたのは西村さんのおかげ」だと藤吉さんは振り返る。