レールガンの発射実験(ウィキペディアより)

 WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)は、5月31日、米海軍が開発中の電磁レールガン(以下、レールガンと表現する)について、「米国のスーパーガン」という表現でその能力と安全保障に及ぼす影響についてかなりセンセーショナルに報道*1した。

 私は、以前からレールガンや指向性エネルギー兵器(DEW: Directed Energy Weapon、 後述のレーザー兵器や高出力マイクロ波兵器のこと)に注目してきた。

 なぜならば、これらの兵器が完成し実戦配備されれば、中国やロシアのA2/AD(Anti-Access/Area Denial:接近阻止/領域拒否)の脅威、特に対艦弾道ミサイルや対地弾道ミサイルの脅威を大幅に削減することができるからである。

 米軍にとっては、レールガンを装備することにより、アジアの作戦地域への接近が再び可能となる。

 A2/ADに対抗する米軍の作戦構想であるASB(Air Sea Battle、現在ではJAM-GCに名称が変更された)で想定していた「空母などの大型艦艇の損害を避けるために、紛争直後に一時期、中国の対艦弾道ミサイルの射程外に後退させる」などの作戦が不必要になり、日米同盟の信頼性の向上にも寄与することが期待できる。

 また、我が国の重要施設(空港や港湾など)の防衛や南西諸島の防衛において、諸外国による各種ミサイルの攻撃や航空攻撃に対して有効に対処できる可能性が増大する。

1 レールガンの開発状況

●WSJの報道内容

 図1を見てもらいたい。

(*配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47056)

 レールガンは、発射薬(大量の高温ガスを発生させ、その圧力により弾丸、ロケットなどを発射させるのに用いる火薬)や炸薬(砲弾などに充填し、信管等の作動で爆発させる火薬)を必要としない。

 固い発射体を電気伝導体のレールで加速し、目標を破壊する。米海軍が開発中のレールガンでは、時速7240キロ(マッハ6)まで加速でき、有効射程は200キロで、1分間に10発の射撃が可能である。レールガンは、航空機、ミサイル、戦車などほぼすべての目標に対して有効である。

 レールガンの発射体を誘導する技術の開発はほぼ完了していると記事は伝えている。スーパーコンピューターを使って狙いを定め、スマートフォンの技術(GPSも使用)を使い軌道を修正する。

*1=“A First Look at America’s Supergun”, WSJ, May 31 2016