米空軍、戦闘機パイロット不足で「危機的状況」

韓国・ソウル南郊の烏山空軍基地でステルス戦闘機「F22」の前を歩く米空軍パイロット(2016年2月17日撮影、資料写真)〔AFPBB News

 中国が現在陥っている経済的危機の深刻さは、「GLOBAL TRENDS 2030」が予想した「中国が破竹の勢いで国力を増強させ米国を2030年に追い越す」というシナリオが実現しないことを意味している。

 私の中国に対するイメージは「手負いの龍」であり、あまりにも無理をして富国強軍を目指したために至る所で綻びが目立っている。

 経済的苦境にある手負いの熊であるロシアがクリミア併合やシリアでの軍事行動などの問題行動を引き起こしている様に、手負いの龍である中国も攻撃的な対外政策をとり続ける可能性がある。

 ダニエル・リンチが「中国台頭の終焉」*1で指摘するように、「中国台頭の終わりは、日本の台頭の終わりが日本のエリートたちを傷つけた以上に中国共産党を傷つけるであろう。国粋主義的な軍人や野望に満ちた外交の戦略家たちは強圧的で不快な外交政策に明らかに関心を持っているが、それらの政策により中国の状況を支え切れるものではない」のである。

 「日米中安全保障関係」をテーマに米国で研究活動を行っていると、大国間の覇権争いの最悪の事態として米中戦争を想定せざるを得ない。

 中国の南シナ海や東シナ海における国際法を無視した主張や行動とこれに対する米国特に太平洋軍の対応を見ていると、偶発的事案(例えば米中の航空機同士の衝突など)が米中戦争に発展する可能性や人民解放軍が強調する短期高烈度地域紛争(Short-Duration High Intensity Regional Conflict)の可能性を意識せざるを得ない。

 安全保障の本質は、最悪の事態に備えることであり、最悪の事態としての米中戦争を想定し、分析し、最終的には米中戦争をいかに抑止するかを考えることは極めて重要である。

 最近(2016年7月)、ランド研究所(Rand Corporation)が“War with China(Thinking Through the Unthinkable)*2” [中国との戦争(考えられないことを考え抜く)]を公表した。

 このランド論文は、米中戦争について4つのケースを列挙・分析し、米中戦争が両国特に中国にいかに甚大な損失を与えるかを定量的に明らかにし、その損害の大きさを強調することによって米中戦争を抑止しようという試みである。

 ランド研究所が得意とする米中戦争のシミュレーション結果に基づく興味深い論文であり、「戦争は、両国の経済を傷つけるが、中国経済が被る損害は破滅的で長く続き、その損害は、1年間続く戦争でGDP(国内総生産)の 25~35%の減少になる。一方、米国のGDPは5~10%の減少になる。長期かつ厳しい戦争は、中国経済を弱体化し、苦労して手に入れた経済発展を停止させ、広範囲な苦難と混乱を引き起こす」などの興味深い指摘がある。

 このランド論文は、米陸軍の委託を受けて書かれたものであり、論文の大部分は秘に指定されて公表されていないと思われる。しかし、今回公表された部分のみでも示唆するところが大きいので紹介する。

*1=Daniel Lynch、“The End of China’s Rise”Foreign Affairs、January 11 2016

*2=David C. Gompert, Astrid Stuth Cevallos, Cristina L. Garafola,“ War with China Thinking Through the Unthinkable”, RAND Corporation