8月に入ってから、尖閣諸島(沖縄県石垣市)海域で中国による威圧的行動が急速にエスカレートしてきた。
武装した中国海警の艦艇が頻繁に日本領海に侵入してくる。本来ならば立ち入る際に日本の了解を得るべき尖閣周囲の接続水域にも、十数隻の武装艦艇が連日のように入ってくる。しかも、数百隻という「中国漁船」を従えている。まさに日本の権益を二重三重に踏みにじる行動である。
中国のこうした行動は一体何を意味するのか。日本はどう対応すべきなのか。そして、日本の同盟国である米国はどう受け止めているのか。その点についての見解を、中国の海洋戦略について研究している米国の4人の専門家たちにワシントンで質問してみた。
結論を先に述べるならば、専門家たちは誰もが、中国の今回の動きは単に尖閣奪取にとどまらず、東シナ海全体で覇権を確立する野心的な目標への新たな展開だと口を揃えた。
米国は軍事衝突を抑止する役割を担っている
今、米国の首都ワシントンはなんとも奇妙な空気の中にある。真夏だから当然暑いし、休暇をとって遠出をしている人たちも多い。人や車はふだんよりもずっと少ない。一方で大統領選挙の本選が近づき、目に見えない高揚感が街を包みつつある。選挙キャンペーンはもちろん全米各地に及ぶが、政治の中心地ワシントンでもさまざまな選挙関連のイベントが開かれている。