本稿は、4月20日付の拙稿「中国への見方を大きく変えた米国、日本は再評価:2030年のグローバルトレンドと日米対中国戦略」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46626)の続編である。
前稿では元太平洋軍司令官デニス・C・ブレア大将の論文“Assertive Engagement:AN UPDATED U.S.-JAPAN STRAREGY FOR CHINA(主張する関与:最新の米国および日本の対中国戦略)”を紹介し、その中国認識と日米共通の対中国戦略「主張する関与」について紹介した。
ブレア大将は、米国の同盟国としての日本の重要性を深く認識した上で、日米同盟関係を背景として「日米共通の対中国戦略を構築すべきである」と主張している。
わが国にとっては非常にありがたい主張であると同時に、日本の真価が問われる厳しい主張でもある。さて、本稿ではブレア論文などを踏まえて、前稿で予告した具体的な対中国戦略についてその一端を、特に南シナ海情勢を焦点に紹介する。
1 台頭する中国への対応は米国を中心とした対中連合が基本
中国は、海洋強国を宣言しているが、一帯一路構想などを見ると大陸国家と海洋国家の二兎を追っているように思えてならない。
しかし、アルフレッド・セイヤー・マハンが主張するように大陸国家と海洋国家の両立は難しく、中国は大風呂敷を広げすぎてしまっているのではないかというのが筆者の評価である。
また、中国は東シナ海と南シナ海の2正面作戦を実施している。わが国は、尖閣諸島を巡り中国と領土問題を抱えるが、東シナ海の問題は南シナ海問題と密接不可分な関係にあることを認識する必要がある。
わが国は、東シナ海問題を巡り単独で中国と対抗する愚は避けるべきであり、米国などと協力して中国の2正面作戦を余儀なくさせ、その弱点を利用することが重要である。
中国は、南シナ海で九段線を根拠に過大な領土要求を実施し、人工島を建設しその軍事拠点化を進め、米軍の航行の自由作戦にも抵抗するなど確かに手強い。
手強い中国に対しては、米国でさえ単独で対応するには荷が重く、米国を中心とした対中連合(coalition)で対処することが基本戦略となる。その連合は、米国を中心として日本、オーストラリア、フィリピン、ベトナム、インドネシア、マレーシア、台湾などで構成すればいい。
中国は、現在、経済の失速に伴う諸問題に直面しているし、権力闘争も激化している。過去の経済力、特にお金の力を利用した膨張的な対外政策は曲がり角に来ている。さらに、中国は、領土問題を抱える周辺諸国すべてと対立関係にある。
米国を中心とする対中連合により、中国の強圧的な政策をより協調的な政策に転換させる必要がある。
以上が筆者の基本的な認識であるが、この認識は日本政府が現在実施している諸施策と一致していると思う。
伊勢志摩サミットにおいて、中国の強烈な反発を受けながらも東シナ海問題や南シナ海問題を討議したことに賛辞を送りたい。そして、バラク・オバマ米大統領のベトナム訪問とベトナムへの武器輸出禁止の解除は対中連合形成にとって大きな成果である。
以下、日米共通の対中国戦略について説明する。