ペルシャ湾の中央に突き出した半島、カタール。国土は秋田県よりもやや狭く、人口は約220万人の小さな国だ。
首都・ドーハの地名は、1993年のサッカー・ワールドカップ(W杯)予選「ドーハの悲劇」でもなじみが深い。そして現在は2022年W杯の開催予定地としても注目を集めている。
これまでサウジアラビアやドバイなどについて話を聞いてきた中東経済の専門家、國學院大學の細井長教授も、カタールには一目置いているという。
オイルマネー、ガスマネーに物を言わせる強気の独自路線。しかし同時に細井氏の話からは2022年W杯への不安要素も見えてきた。
原油安の痛手は少なく済んでいるのか
――まずカタールを理解する上で抑えるべき点は何ですか。
細井長氏(以下、敬称略):石油に加えて、天然ガスの産出国だということです。カタールは世界最大のガス田である「ノースフィールドガス田」を持っています。インドネシアやオーストラリアでも天然ガスは採れますが、大量に安定供給できる点でカタールに勝る国はありません。
石油は基本的に市場で取引されるので「原油価格」として相場がありますが、ガスの場合は相対取引で、価格も直接交渉となります。
特に、日本、中国、韓国、台湾、タイなどアジア向けの価格は、欧州向けよりも高く「アジアプレミアム」と言われています。直接パイプラインで供給できないので、液化して輸送するコストがかかるためです。
当然、日本も例外なく、「ジャパンプレミアム」で売られています。中部電力はカタールの液化天然ガス(LNG)の最初の取引先として知られますが、高価格でも買わざるを得ないという点では足元を見られていると言えるでしょう。