原油市場の底値が見えない状況が続く中、財源の7割以上を石油関連収入に頼るサウジアラビアでは、2015年の財政赤字が1000億ドルを超えている(参考:1月15日「サウジアラビアを崩壊に導く独断専行の副皇太子」JBpress)。
「当面はオイルマネーの切り崩しで乗り切れたとしても、国家百年の計として見れば、雇用、教育、民主化などサウジはいま大きな問題に直面しています」と中東経済を研究する國學院大学経済学部の細井長(ほそい・たける)教授は話す。
若年層の雇用問題はすでに顕在化し、雇用を先送りするために大学の数を増やして若者を押し込んでいるのだという。
深刻化する雇用問題
──原油価格の下落でダメージを受けるのはサウジに限らないと思いますが、なぜサウジでは雇用問題がそこまで深刻なのでしょうか。
細井長氏(以下、敬称略):サウジが他の中東諸国と違う一番の点は自国民の多さです。UAEやカタールは極端に外国人が多いので、外国人と自国民の割合は9対1ですが、人口の多いサウジでは半々程度です。
──外国人労働者をめぐる変化も起きているのでしょうか。
細井:原油価格の下落が続くことで、企業に自国民の雇用を促す「サウダイゼーション」の強制力が強まっています。中東諸国は労働力の自国民化を掲げていて、サウジなら「サウダイゼーション」、UAE(United Arab Emirates)なら「エミライゼーション」と呼ばれています。
──具体的にはどのような施策がとられているのですか。
細井:サウジでは、タクシー運転手など一部の職業は自国民しか就けないようになっています。また、「ニタカット・プログラム」では、会社が雇用しているサウジ人の割合に応じて、その企業で働く外国人の滞在(就労)を許可する期間をコントロールしたり、サウジ人の割合が低い企業にはペナルティを与えています。また、外国企業でも人事部門のトップは必ずサウジ人でなければいけないことになっています。
──雇用に関して特に大きな課題は何でしょうか。
細井:若者の雇用問題です。サウジでは30歳未満の人口が国民の約7割を占めています。このままいくと、2030年までに労働人口が2倍になるとも予想されています。女性の雇用となると、さらに厳しいですね。