前回はアジアの出稼ぎ大国インドネシアの事情をお伝えした。今回は、先日54年ぶりに天皇皇后両陛下が国賓として訪問、親日ぶりを海外メディアにアピールしたもう1つの出稼ぎ大国のフィリピンについてリポートする。
フィリピンは、海外に常に1000万人以上の労働者を抱える。実に「国民の10人に1人」が出稼ぎ労働者だ。
海外から送金される総額は1年間に約230億ドルで(2013年の政府公式統計。実際は約450億ドル=フィリピンの年間国家予算規模に相当するとも)、ここ10年間で3倍増、GDP(国内総生産)の約1割にも達する。
アジア最大、世界屈指の出稼ぎ大国である。
フィリピンの国民的英雄
フィリピンの経済を支える彼らはまさに「国民的英雄」と呼んでもいい。マニラの空港に到着すると入国審査の場所には、「OFW lane」(Overseas Filipino Workers=海外労働者)の特別レーンが設けられ、海外雇用庁や海外労働福祉庁といった専門官庁も完備されている。
インドネシアと同様、国策として1970年代から海外就労を奨励し、キリスト教徒が多い同国のクリスマスには、海外から休暇で一時帰国した彼らを空港で大統領自らが出迎え、特に優秀な労働者には「Bagong Bayani Award( 現代英雄賞)」が国民栄誉賞として与えられるほどだ。
しかし、インドネシアと同様、フィリピンも海外での自国労働者への迫害、さらには近年、経済成長率平均6~7%前後とASEAN(東南アジア諸国連合)の中でも断トツの堅調な成長に後押しされ、「海外メイド派遣規模縮小」を表明し始めた。
その堅調なフィリピン経済は、安定した個人消費に支えられている。国連人口基金(UNFPA)によると、フィリピンの人口は2014年、1億人の大台を超え、ASEAN主要5カ国では約2億4800万人のインドネシアに次いで2位。
インドでさえ、人口増加のピークは2060年代と言われるなか、フィリピンの人口は右肩上がりで、2050年には約1億5710万人、2100年には約1億8800万人と今後、約90年近くも増加していくと予想されている。
さらに平均年齢は23歳と非常に若く、少子高齢化により生産年齢人口減少で成長鈍化が懸念されるほかのアジア諸国とは一線を画している(関連記事1,2,3)。