政府がお見合い会を主催しなければならなくなった国、シンガポールのケースを前回は見てきた。しかし、「笛吹けども踊らず」で、少子化対策に特効薬はないようである。
ASEAN(東南アジア諸国連合)で第2位の経済大国、さらにこれからも投資拡大が期待されているタイも、実は少子高齢化問題が重くのしかかってきた。
タイと言えば、日本と二人三脚で発展してきたと言ってもよいほど日本企業の進出が著しい。タイで大規模なデモが発生して放火されるような事件があっても、日系企業の入っているビルは絶妙に避けるとも言われている。
日本にとってもアジアの拠点として最も重要な国と言ってもいい。しかし、この国でも少子高齢化が急ピッチだ。いまや日系企業がタイに進出する際の問題は、賃金やカントリーリスクの上昇ではなく、実は人手不足(高度人材含む)にある。
あと15年で高齢者率25%に
タイ国家統計局によると、2014年の60歳以上は6500万人の人口のうち約1000万人で、全人口の約15%にも上り、6.5人に1人が60歳以上という、すでに立派な高齢化社会となってしまった。
1994年に約7%だった60歳以上人口が2012年には約12%へと跳ね上がった。高齢者数は2030年には1760万人(総人口の約25%)、2040年には2050万人に達すると見込まれている。
また、合計特殊出生率も1.39と日本より低く、首都バンコクに限っては0.8とも言われ、平均年齢も他のアジア諸国よりはるかに高い34歳(ASEAN域内で2番目、トップはシンガポール)。
ASEAN域内では、イスラム国家ゆえに人口増が見込まれるインドネシアやマレーシアを除けば、タイはシンガポールに次いでいち早く、“超”少子高齢化社会へ向かうのは間違いないだろう。
他のアジアの国と同様、医療技術発展に伴い平均寿命が伸び、高齢化に拍車がかかり、一方、人口抑制策を進めるなか、女性の高学歴化による社会進出拡大で晩婚化、未婚化が急増していることが背景にある。