いまや完全に死語になってしまった「アメリカがくしゃみをすると日本は風邪を引き、香港は肺炎にかかる」は、アジアについては次のような相関関係に変わっているようだ。「中国が鼻水を垂らすとASEAN(東南アジア諸国連合)のお腹がいっぱいになる」
カンボジア、ベトナム、フィリピン・・・、急成長し始めたASEAN経済
「アメリカがくしゃみ・・・」は、米国経済に依存しすぎていた日本とアジアへの揶揄だったが、最近の現象は中国という人口が半端ではない国の影響力の強さを示していて面白い。
このコラムでも何度か紹介したように、尖閣諸島に中国の漁船が侵入した事件を契機に日中関係が冷え込んで以来、日本企業による脱中国の動きが加速している。
脱出先の中心はASEANだ。とりわけカンボジアやベトナム、フィリピンなどがその影響を最も強く受けているようだ。
例えば、最近の記事では英フィナンシャル・タイムズ紙が「活況に沸くカンボジア製造業」という記事を配信している。
FT紙が“脱中入亜”の理由として挙げているのは中国の賃金上昇だが、反日暴動の影響も大きい。急速に進む賃金上昇に悩む経営者の背中を強く押すきっかけとなっていることは疑いようがない。
その日本企業がASEANの中でまず向かいたがるのがタイだ。
元首相のタクシン派と反タクシン派の対立がいまでも続いているとはいえ、タイ人の優しさに惹かれる気持ちはよく分かる。
また、製造業だけでなくサービス産業の進出が進んだことで、まるで日本にいるかのように仕事ができるようになってきた。それがさらに日本企業の進出を呼び込む循環を生んでいる。
しかし、日本企業の進出ラッシュが続き、タイではお腹がいっぱいになりすぎて、もう食べられないといった状況。その状況を3年前にタイに進出した日本駐車場開発の川村憲司副社長に聞いた。