(2013年1月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
カンボジアのとある縫製工場。白と青のペンキが塗られた建屋の中には、シンガー製の中古ミシンがずらりと並んでいる。昨年閉鎖された中国の工場から運び込まれたものだ。
ブラジャーの受託製造を手がける香港企業トップ・フォームは、この工場で700人の従業員を雇っている。ここ1年あまりで多くの企業が他国(主に中国)の拠点をカンボジアに移しているが、同社もその1つだ。狙いは安価な労働力。カンボジアの賃金水準は中国のざっと3分の1なのだ。
中国では賃金水準が2ケタの上昇を記録しており、工場労働者も不足している。そのためベトナムやバングラデシュ、インドネシアなど賃金の安い国に進出する企業が出てきている。
同じく香港に本社を構えるブラジャーメーカー、クローバーの最高経営責任者(CEO)、アンジー・ラウ氏によれば、同社はインドにも工場が1つあるが、工場運営はカンボジアの方がやりやすく、カンボジア工場の生産性も中国の工場のレベルを目指して急ピッチで上昇しているという。
人口わずか1500万人のカンボジアは今、外資の流入による経済の変容を目の当たりにしており、首都プノンペンの周辺やタイとの国境付近では新しい工場が次々に建てられている。これまでタイに向かっていた投資の一部も、カンボジアに流れてきているのだ。
安価な労働力求め、香港系中国企業が日本企業が殺到
カンボジアへの投資は昨年、香港の中国企業や日本の企業が安価な労働力を求めてやって来たことで急増した。アジア開発銀行(ADB)のカンボジア担当シニアエコノミスト、ピーター・ブリンブル氏の推計によれば、この国への外国直接投資(FDI)は2011年の総額8億5000万ドルから2012年の15億ドルに跳ね上がった。製造業や農業、金融セクターへの投資が伸びたという。
台湾のメドテックスはベトナムに近い中央低地の州、コンポンチャム州に工場を擁し、4000人の従業員を雇って手術衣を生産している。同社のラリー・カオ部長は冗談めかして次のように語っていた。「たくさんの外国企業が労働者を奪い合っている。カンボジアの人口が2倍になってくれれば有り難いんだが」
カオ氏の推計によれば、工場労働者の賃金は3年前には月間85~100ドルだったが、今では同110~130ドルに上昇している。しかし、中国の同400ドルに比べればまだまだ低い。
中国から工場を移転させている中国本土や香港の投資家たちに加え、昨年にはいくつかの日本企業もカンボジアに投資を行った。こちらはタイとの国境に近い地域が中心だ。
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