新年明けましておめでとうございます。2009年4月に始まったこのコラムも足かけ4年目になりました。
連載開始当初は「結婚のかたち」というタイトルにふさわしく、家庭の話題を中心にコラムを書いていました。それが、いつのまにか政治を含めた諸事全般について語るようになり、現在に至っています。
それでもタイトルを変えていないのは、「結婚=家庭」に影響を及ぼすものとして、社会の諸事情に言及してきたつもりでいるからです。
今年も、身辺の雑事から世間を騒がした出来事についてまで、私が思うところを述べていきますので、よろしくお願いいたします。
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前回のコラムが公開された2012年12月11日からの1カ月間で起きた最大の出来事といえば、衆議院選挙での民主党の大敗北による政権交代である。
12月16日(日)の投開票から2日後の毎日新聞では、片山善博慶應義塾大学教授(元鳥取県知事)、野中尚人学習院大教授、宇野重規東大教授の3人が「衆院選 自民圧勝を振り返って」という座談会を行っている。
座談の冒頭での3氏の発言を、少々長いが以下引用する。
──衆議院選挙の結果をどう受け止めましたか?
片山氏 自民党が議席を相当伸ばし、民主党が惨敗することは解散した時から予想できた。野田首相はあのとき、解散すれば自民党に有利だと分かっていたはずなのに解散した。党内の「野田降し」の動きもあったし、解散することで第三極が伸びる芽を摘むという考えもあったのだろう。しかし今回はアブノーマルな選挙だった。解散する前に争点が収束していたからだ。そのため選挙の争点がもろに民主党の評価になり、民主党だけがだめ出しされ、惨敗せざるを得な かった。
野中氏 少しつけ加えると、ナショナリズムの問題が根底にある。先進国に共通の病として、グローバル化や移民の存在を踏まえ、極右勢力が台頭してきている。それと同じ流れが日本でも尖閣諸島や竹島問題をきっかけに出てきた。それで、短期的には自民党や安倍総裁に有利な流れになった。
宇野氏 自民党がここまで増え、民主党が50議席台まで落ち込むというのは予想外だった。勝ち馬に乗ろうという流れが加速したのが印象的だった。選挙結果を全体として見ると、「中道左派の壊滅的な後退」というのが私の印象だ。世界的に、平等を志向する中道左派に行き詰まりが見えるが、日本は持ちこたえるどころか、壊滅的になった。社民党、共産党だけでなく、民主党も左派系議員が落選した。代わって、ある種のナショナリズム勢力が大きく伸び、新自由主義の傾向がはっきり出た。今後、中道左派勢力に支持が戻ってくるのかそれともこの流れが続くのかが、私の最大の関心事だ。
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最初にフェアプレー精神に則って告白しておくと、私の立場は宇野氏が語る「中道左派」に近い。よって、「中道左派に支持が戻ってくるのかそれともこの流れが続くのか」という宇野氏の関心は私の関心でもある。
「結婚のかたち」でも繰り返し述べているが、私は男性も女性も共に職業を持ち、協力しながら家庭を営んでいくようになればいいと思っている。財力、知力、体力に秀でた者たちが発揮するパワーを軽視するわけではないが、誰の目にも評価されやすい力だけで社会は成り立っているわけではない。
よって、富の再分配による社会福祉の充実や教育の機会均等はさらに押し進めるべきだし、なにより働く者たちが家庭や地域社会で過ごす時間を増やしていくことが大切だと、私は常々考えている。
ただ、民主党がそうだったように、日本の中道左派勢力には致命的とも言える弱点がいくつもあり、今回の衆院選で「壊滅的になった」のも、理由のないことではなかった。
そして、その失態に輪をかけるように、2012年12月28日には「日本未来の党」が分裂した。
〈小選挙区で約299万票、比例で約342万票を獲得した「日本未来の党」が投開票日から10日あまりで分裂した。(中略)小沢一郎氏が嘉田由紀子滋賀県知事を選挙用の看板として担ぎ出したあげく、選挙が終わるやいなや追い出した。嘉田氏が揚げた「卒原発」に寄せられた民意は宙に浮き、国民の政党政治への不信を一層深めそうだ。〉
〈工藤泰志・言論NPO代表の話 民主党離党者の延命のため、国民の原発に対する不安を利用したような党だった。党内のガバナンス(統治)も政策もあいまいで、「掛け逃げ」みたいな党だと有権者も気づいたから、選挙で勝てなかった。ただ、分党した小沢代表側が政党交付金まで受け取ったのは、新党を活用した集金ゲームに思える。これが常用化すれば、有名人を広告塔で党首にして政党交付金を増やすことも可能になる。〉