小沢一郎が消費税増税法案に反対し、民主党から離党(除籍処分)した。衆参合わせて約50人が行動を共にした。政権与党から、これほど多数の離党者が出るというのは異例のことである。「離党予備軍」もいる。すでに参議院では与野党が逆転しており、民主党単独では政権運営がまったくできなくなっている。2009年9月に自民党との政権交代が実現し、鳩山政権が誕生した時の国民も含めた高揚した気分は、遠い過去になってしまった。

 その責任は、現在の民主党創立の立役者となった鳩山由紀夫、菅直人、小沢一郎の3人に求めなければならない。まずは最初の首相、鳩山由紀夫である。

決定的に欠けていた「実現する能力」

 鳩山は政治家にとって最も大事な資質が欠如していた。

 鳩山が首相に就いたとき、多くの国民が高い支持を与え、期待した。鳩山は若い頃、中曽根康弘元首相から「ソフトクリームのように甘っちょろい」と評され、またその世間の常識とはかけ離れた言動ぶりから「宇宙人」などと揶揄された。これらは決して褒め言葉ではない。

 しかし鳩山にとっては、これらの批評は決してマイナスではなかった。「世俗にまみれていない政治家」という印象は、「世俗にまみれた政治家」の集団・自民党と好対照だったからである。

 そのうえ鳩山一郎元首相の孫であり、世界のブリヂストンの石橋家の一族であることから政治家随一の大富豪でもある。これらが相まって、多少頼りなさはあるが、少なくとも悪い人ではない、良い人だという印象が作り上げられてきた。

 この鳩山に、国民が古臭い自民党政治からの脱却を期待したのも無理はなかった。

 実際、普天間基地問題での「最低でも県外」発言、「温室効果ガス25%削減」発言、「緊密で対等な日米関係」、事務次官会議廃止、行政刷新会議等々、鳩山内閣がやり始めたことは、危うさと同時に新しい政治の始まりを実感させた。自民党政治からの脱却という意欲のあふれたものであった。だが、その期間はあまりにも短かった。