香港の外国人メイドに永住権認めず、最高裁で当局が逆転勝訴

香港(Hong Kong)の終審法院前で、外国人メイドの永住権を認めない判決が出た後で取材に応じる移民労働者の権利保護団体「AMCB(Asian Migrants' Coordinating Body)」の広報担当者、イーマン・ビラヌエバ(Eman Villanueva)氏(左)ら(2013年3月25日撮影)〔AFPBB News

 「世界で最も影響力のある100人」(米有力誌タイム)に選ば れたスリスティヤニンシさん(当時23歳)は香港で、移民外国人メイドとして働いていた。

 インドネシア人のスリスティヤニンシさんは、雇用主から瀕死の状態に陥るまで虐待を受けたことをきっかけに、外国人労働者の人権保護や人道的扱いを求める活動を主宰し現代版「ジャンヌ・ダルク」としてその勇気と行動をタイム誌で高く評価された。

 香港で長年くすぶってきた移民外国人の不当な扱いや虐待の事実を国際社会で表面化させ、世界から注目を浴びたのだ。

 彼女の雇用主で10代の2人の娘の母親である香港人、ロー・ワン・トン(当時44歳)は、日常的に掃除機の先をスリスティヤニンシさんの口に押し込んだり、ハンガーなどで顔や頭、足などを執拗に殴るなどして、彼女が自力で立てなくなるまで肉体的、精神的虐待を負わせた。

43年の歴史がある香港

 それだけでなく、食事や給料もほとんど与えず、スリスティヤニンシさんの50キロあった体重は20キロまでに激減していたという。

 雇用主は訴追され、2015年2月、香港の裁判所は雇用主ロー氏に傷害罪などで6年間の禁固刑という有罪判決を下した

 国土が狭く人口約720万人の香港は、雇用不足解消と女性の社会進出拡大を目的に家事と育児負担を軽減するため1973年から43年間、積極的にメイドを海外から招聘してきた。

 そのほとんどは女性で、フィリピンやインドネシアからの出稼ぎだ。1990年に約6万5000人だった移民外国人メイドは、今では約33万人(2014年末)までに急増。全労働人口の約8%にも相当する。

 香港経済には不可欠な人材として定着し、香港はアジアで最大、世界でも屈指の移民外国人メイド大国で知られる。

 移民外国人メイドの最大のメリットは、日本でも目的とする将来的な労働力として期待する女性の社会参画の促進だ。