地球温暖化は日本では連日の猛暑日や暖冬、世界各地では熱波の襲来、そして海面の上昇などで身近に感得され、喫緊の課題となってきた。世界の英知を結集して対処しなければ多くの国が消滅するなど、未曾有の大災難がやってこよう。
その主たる要因とみられているCO2(二酸化炭素)の削減問題では、従来先進国に課してきた義務を、パリで開催された国連気候変動枠組み条約・第21回締約国会議(COP21)で途上国も分担することになった。埋没の危機に直面する44の島嶼国グループの訴えが大きかったとも言われる。
その会議のさなか、世界一のCO2排出量の中国では、高濃度のスモッグが首都北京を覆い、PM2.5(微小粒子状物質)による「危険」レベルの汚染が4日連続する赤色警報が出る異常な光景をさらし続けた。
PM2.5は粒子の大きさが2.5ミクロン(髪の毛の太さの約30分の1)と小さいので、肺の奥深くまで入りやすく、呼吸器系疾患への影響のほか、肺がんのリスク上昇や循環器系への影響も懸念されると言われてきたが、死亡についてはほとんど聞かれなかった。
台湾におけるPM2.5による疾患
しかし、「産経新聞」(平成27年12月26日付)は、台湾ではPM2.5による大気汚染が原因で、2014年の1年間に6281人が死亡したというデータを台湾大公共衛生学院がまとめたと中国時報が伝えたことを報道している。
細部を見ると、慢性疾患による死者3万3774人のうち、PM2.5によるものが全体の約19%を占めるという。内訳は虚血性心疾患2244人、脳卒中2140人、肺がん1252人、慢性閉塞性肺疾患645人である。
汚染原因は、北部は交通に起因するものが多く、中南部は工場や火力発電であるという。しかし、秋冬の季節風で中国大陸から汚染物質が運ばれてくるとの報道が多いともいう。
報道では、台湾の2014年のPM2.5の年間平均濃度は1立方メートル当たり25マイクログラム(25μg/m3)であったという。ちなみに日本の平均は15~20μg/m3(2001~2012年)となっており、台湾よりやや低い濃度である。
ただ、近年は中国の大気汚染が頻繁なため、偏西風で日本に運ばれてくる危険性も増大する。熊本育ちの筆者はかつてしばしば黄砂に見舞われたが、今日言うところのPM2.5の自覚はなかった。
環境省のQ&Aによると、黄砂の主体は4ミクロンくらいであるが、2.5ミクロン以下の微小な粒子も含まれるため、PM2.5濃度を上昇させることもあるとしており、黄砂だからと見過ごせなくなっている。