南北離散家族に別れの面会、高齢者は「最後」の覚悟

北朝鮮南東部の金剛山で行われた南北離散家族再会事業、前半の最終日、北朝鮮側の家族を見送りながら泣く韓国側の家族(2015年10月22日撮影)〔AFPBB News

核実験への制裁強化で遠のく救出の可能性

 安倍晋三政権は、北朝鮮の「水爆」実験を受けて、従来からの制裁阻止に加え、北朝鮮への渡航者の再入国禁止や金融資産凍結の拡大を急いでいる。米国などとともにより強力な対北朝鮮経済封鎖策を進めているが、中国の「反対」でなかなか進まないからだ。

 北朝鮮に経済的ダメージを与えて核・ミサイル開発をやめさせるのが狙いだ。が、その結果、安倍政権の優先課題である日本人拉致被害者救出はどうなるのか。

 日本が追加制裁措置をとれば、北朝鮮が拉致被害者を返す可能性はより遠のくに違いない。

 朝鮮民主主義人民共和国という国は、まさに、全体主義的独裁監視管理社会の世界を描いたジョージ・オーウェルの『1984』を地でいく国家。

 飢えと貧困にあえぐ国民をよそに核・ミサイル開発を続け、喉から手が出るほど日本からカネが欲しいくせに拉致カードをちらつかせながら、これまで日本から得たのは25万トンの食糧支援と1000万ドル相当の医薬品だけだ。逆に経済制裁で首を締めあげられている。

 米保守系シンクタンクの上級研究員の1人は吐き捨てるようにこう言う。

 「アジアでも最貧国の北朝鮮の瀬戸際外交は、核・ミサイル開発でも拉致問題でもその非常識さゆえにこれまで成功してきたかに見える」

 今年に入っての一連の動きに、今なお家族や親族を北朝鮮に置き去りにされている拉致被害者家族はいたたまれない心境だろう。

 「核実験と拉致とは問題が違う。拉致問題の解決が長引いたり、反故にされたりすることは絶対にあってはならない」

 拉致被害者家族会のメンバーの1人、飯塚繁雄代表の悲壮な叫びだ。