序盤戦アイオワ州でトップに躍り出たキューバ系
米共和党大統領候補の指名争いで支持率トップに立つ不動産王、ドナルド・トランプ氏の強敵は、何も元旦恒例のカリフォルニア州パサデナのパレードの空に出現した「トランプにはむかつく」を描かれた飛行機雲ではない。
「予備選は短距離競争ではなく、長丁場のマラソンだ」と言い切り、2月1日から始まる予備選を前にトランプにじりじりと迫る筋金入りの保守理論派のテッド・クルーズ上院議員(44)だ。
2月1日から正式にその火ぶたを切って落とす予備選。2月1日のアイオワ州党員集会。投票が行われる事実上の全米最初の予備選だ。
同州は本選挙では「スウィング・ステート」と呼ばれる。選挙のたびに民主、共和両党の間で勝利政党が変動する州。そのアイオワ州だけを対象に行われた最新の6つの世論調査の平均値ではクルーズ氏がトランプ氏を3.6%引き離している。
専門家の中には人種偏見に満ちた毒舌にそろそろ「トランプ・ファティーグ」(対トランプ倦怠症候群)現象が出てきたとの指摘もある。
これまで無責任な、それでいてどこか米庶民の本音を代弁しているトランプ氏を面白半分で支持してきた一般庶民も、さすがにアジ演説だけで中身のない「政策なき大統領候補」に対し、いや気がさしているというのだ。
そうしたこともあって、これまで支持してきた「草の根保守」や「宗教保守」の票もトランプから離れ始めたと言える。で、その票の流動先はとなると、同じ保守でも政治理念と政策に裏打ちされているクルーズに流れ始めたというわけだ。
東部エリート教育を受けたテキサス男
いったいクルーズ上院議員とはどんな人物なのか。自身が著わしたのが本書だ。いわば選挙用自叙伝と言っていい。
彼はキューバ移民の父親と英国系でデラウエア州出身の母親との間でカナダで生まれた。父親がカナダにある石油関連会社に勤めていた。
その後家族はテキサス州に移住、幼年期から高校までテキサス州で過ごした。信仰心の篤い南部人独特の白人保守主義が体に染みついている。
上昇志向型からか東部のエリート校に進むことを考えていたクルーズ氏は迷うことなく、プリンストン大学を選んだ。