「介護離職」が今深刻な問題になっている。厚生労働省の「平成25年雇用動向調査」によれば、2013年の介護離職者は9万3400人で、離職者全体の約1.3%を占めている。数は少ないように見えるが、前年の6万6100人と比べて41%も増加している事実は見逃せない。離職者全体に占める割合も0.98%から1.3%と増加した。5年前(2008年)の4万6800人と比べると2倍にもなっており、高齢化と共に急ピッチで介護負担も増している。

 特に、親の介護が必要になり始める40代後半から50代後半までの男女に多い。働き盛りの管理職が職場を離れることは、会社にとっては大きな痛手だ。

 介護者当人にとっても、心身共に負担が増すだけでなく再就職の困難さなどさまざまな問題が待ち受ける。追い詰められて自殺、殺人に至るケースさえもある。すでに事態は深刻だ。

 そこで、介護離職の現状や、介護離職を避けるためのポイントなどを、介護離職のない社会の創造をめざして活動しているワーク&ケアバランス研究所(以下、WCB)の運営責任者である和氣美枝氏に聞いた。

介護離職がもたらす深刻な問題

──毎年10万人近くが介護離職に追い込まれているといわれていますが、その主な原因はどこにあるのでしょうか?

和氣美枝氏(以下、敬称略) 自分の会社に「介護休業制度」や「介護休暇制度」があることを認識していない従業 員が非常に多いことが大きいと思われます。「介護」の話がしやすい“社風”かどうかも影響します。また、介護について会社に理解はあっても、実際の現場に 理解がない場合もよくあります。仕事と介護の両立問題は、経営者および部門長やリーダーが積極的に取り組まないと難しいのです。

――介護休業・介護休暇制度を知らずに、追い込まれたまま介護離職に至ってしまった人たちには、実際どのような問題が起きているのでしょうか?

和氣 一番は、介護殺人・介護自殺。次いで、経済的負担が増すこと、肉体的負担、精神的負担、ビジネススキルの低下というのが主な問題です。