
米グーグル傘下のAI(人工知能)開発部門、グーグル・ディープマインドのデミス・ハサビスCEO(最高経営責任者)はこのほど英ロンドンで開いた説明会で、人間と同等かそれ以上の知能を持つ汎用人工知能(AGI)が「今後5~10年以内に登場する」との見通しを示した。ただ、AGIの実現時期については、専門家の間でも意見が分かれるようだ。米CNBCなどが報じた。
AGI、そしてASIへ
AGIは、特定のタスクに特化した現在のAIとは異なり、人間のように幅広い分野で自律的に学習・問題解決できるAIを指す。ハサビス氏は「今日のAIシステムはまだ受動的で、できないことが多い。しかし、今後5~10年で多くの能力が向上し、AGIへと進化するだろう」と述べた。
同氏は、AGIの先にある人工超知能(ASI)についても言及した。ASIは、人間の知能をはるかに凌駕(りょうが)するAIとされ、その実現は人類にとって計り知れない影響をもたらすと予想される。同氏は、ASIについて「いつ実現するかは誰にもわからない」としながらも、研究が着実に進展していることを示唆した。
ハサビス氏は、AGI実現への課題として、AIが現実世界の文脈を理解する能力を高めることを挙げた。ゲームの世界ではAIが自律的にタスクをこなせるが、現実世界ではまだ困難が多いという。
グーグル・ディープマインドでは、AIエージェント同士が協力・競争しながらタスクをこなす「マルチエージェント」AIシステムの研究を進めている。ハサビス氏は人気戦略ゲーム「StarCraft(スタークラフト)」を例に挙げ、複数のAIエージェントが連携することで、より複雑なタスクをこなせるようになると説明した。
グーグルのクラウドサービス部門「グーグル・クラウド」のトーマス・キュリアンCEOは、AIエージェント同士がコミュニケーションを取り、互いのスキルやツールを共有することで、より高度な問題解決が可能になると述べた。