6 日本への影響
米国の掲げるエアシーバトル構想は、構想主導のインパクトの大きい戦略で、中国に対する政治的、軍事的刺激も大きい。今後、米中間では、経済・政治的な協調と並行しつつ、西太平洋地域における軍事的な綱引きも激化するだろう。
それゆえ、狭間に立つ日本が、積極的な対米協力も対米協力の拒否もともに困難に陥る公算は小さくない。
日本には、下に示す4つが求められるだろう。
(1)基地の提供と抗堪化
(2)自衛隊の能力強化(対潜戦能力、機雷敷設・処理能力、水中戦能力、ミサイル防衛能力、南西諸島の確保能力、戦略機動力、指揮・統制・通信・コンピュータ・情報・探知・偵察=C4ISR能力)
(3)構想具体化のための資金の提供
(4)構想への積極的参加
そして、これらの提供の可否が、対米安全保障協力のリトマス試験紙になる。そのことは、普天間だけに限らない極東地域における安全保障そのものに対する日本の姿勢を問われる問題になる。
同時に、沖縄の戦略地理的な位置に益々焦点が当たることになり、逆説のようにその重要性がますます高まるだろう。
一方、米国にとって、この地域における支配権の確保こそ極めて重要であるが、これらの実現が戦略的、財政的に困難な場合、長期戦略的に防衛線を後方に下げる可能性(南西日本の一時的放棄)も否定できない。
まさに、膨大な経費負担と同盟国なかんずく日本の協力がカギとなる、極めて難しい戦略に直面することになるわけである。
折しも、米韓で外務・国防大臣による初の2+2会議が開催され、米韓関係が、日米、米豪同様に重要であることが明らかになった。
さらに、7月25日から4日間にわたり、嘉手納を含む在日米軍基地も利用して今後数カ月かけて行われる演習の一部として、原子力空母ジョージワシントンほか20隻の艦艇、ステルス戦闘機「F-22」200機を含む合計8000人が参加して、米韓合同演習が日本海で行われた。
いずれ日本の参加も求められようが、日本として、中国の台頭を踏まえ、地域の安全保障と繁栄のシステムをどう構想するかという大きな視点からの対応が必要になるだろう。