3 対象地域と対象領域

 対象地域は、第1列島線、第2列島線という中国の航空機の行動半径やミサイルの射程でカバーされる地域、および潜水艦の遊弋と射程1500キロメートルの対艦弾道ミサイル(開発中)で米空母を抑制する地域である。

 しかし、戦闘ネットワークを経由した情報を基に戦う現代の戦闘は、その地域だけでは完結せず、3次元は言うに及ばず、戦力発揮に不可欠な海、空、陸、宇宙、サイバーなど5次元領域に及ぶことになる。

 特に戦力発揮のための結節(ノード)は宇宙に多く存在し、そこが弱点となって狙われやすい。

 6月28日発表の米国の新宇宙政策は、ジョージ・W・ブッシュ大統領の「宇宙兵器の制限」を拒否する政策を転換し、中露の提案する宇宙空間における軍備管理の必要性に賛意を示すものとなった。宇宙を適切に管理しなければ、米国優位が脅かされると考え始めたのである。

今年10月、サイバー司令部が本格運用へ

米軍新設サイバー司令部紋章、コード解読に読者が挑戦 ワイアード誌

米軍サイバー司令部の紋章〔AFPBB News

 また、10月には戦略軍に仮編成したサイバー司令部を本格的に運用し始める。これも頻繁に繰り返される中国のサイバー攻勢をにらんだものである。

 米国優位の宇宙の軍事利用を脅かし、サイバー領域にも迫る中国を強く意識せざるを得ない米国の状況が目に見えるようだ。

 そして、8月16日公表の「中国の軍事力と安全保障の進展に関する年次報告書」は、宇宙やサイバーを含めた、中国海軍の外洋型海軍への転換による対アクセス/地域拒否戦略の強まりに強く警鐘を鳴らすものとなった。

 一方、エアシーバトル構想には協力(期待)国が必要で、その筆頭は日本とオーストラリアである。構想の具体化に伴い、最も地理的に重要な位置を占める日本に対する要求が強まるのは確実だろう。