4 構想が想定する米中の取り得る手段

 中国は、戦略を具体化する手段として、空爆やミサイル攻撃などの直接攻撃手段と、弱点となるノードの機能低下を狙う間接攻撃手段(対衛星攻撃=ASAT=やサイバー攻撃など)を併用する。

 前者の場合、中国は、第1列島線以西において、濃密な短距離ミサイルや短距離攻撃機による艦艇や基地に対する攻撃により地域の完全支配を目論み、第2列島線付近、場合によってそれ以東において、中距離ミサイルや潜水艦による米空母群およびグアムなどの固定基地への攻撃により米軍の地域支配を拒否しようと目論むだろう。

 後者は、先進社会や軍事組織の弱点を徹底的に攻撃し、米軍の機能発揮を殺ぐ殺手鐗(Sha-sou-jian)と言われる中国独自の弱者の戦法として奨励されている。結果として、後者を併用しながら対アクセス/地域拒否戦略を完成させることになる。

 これに対し米国は、先制奇襲の利が中国にあることを前提に、平時から前方基地の抗堪化や宇宙・サイバー領域の靭強化で開戦直後の指揮の断絶を回避し、早期主動権奪回のための攻撃を想定するとともに、次に説明するような、奪回後の長期戦を覚悟した戦略を立案するだろう。