油を使わなければ真の炒め物にあらず

変わるキッチン(第13回)~炒める

2015.05.29(Fri)澁川 祐子

 その後も1968(昭和43)年10月号、1971(昭和46)年4月号、1982(昭和57)年8月号と何度となくフッ素加工のフライパンをテストしているが、そのたびに鉄のフライパンに優るものはないと結論づけている。こうしてしばらくの間、鉄のフライパンが炒める道具として不動の地位を保っていたのである。

「炒めるといえば強火」に変化の兆し

 フッ素加工のフライパンや鍋が調理器具売り場を席巻するようになったのは1990年代になってからだ。いまでは「こげつかない」は珍しくもなんともない。では、それによって炒め調理に何か影響はあったのだろうか。

 今回調べていて、炒め物の新たな常識として「弱火で炒める」が広まっていることを知った。提唱しているのは、フランス料理のシェフである水島弘史氏。家庭用コンロの火力でテフロン加工のフライパンを使ってつくる場合は、野菜をあまりかき混ぜずに弱火で時間をかけて炒めたほうが野菜の水分が逃げずにしゃきしゃきに仕上がるという。これまでの「強火で手早く」とは正反対である。

 作るための道具さえなかった時代から手軽なおかずとなり、いまや道具や環境の変化によって、調理の仕方すらも変わりそうな勢いだ。だが、野菜炒めといえば今も昔も、しゃきしゃきがベストという考えだけは変わらない。

 理想の味をいまある道具や環境で、どう作り出すか。ちょっとした火加減や混ぜ具合、鍋の振り方が異なった味を作り出すだけに、「炒める」はいつだって試行錯誤のしがいのある調理法なのである。

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