今週は世界経済、なかんずく規模の大きな中国の減速で原油価格にさらに下げ圧力が高まっているという記事「中国経済の急減速で原油価格は二番底へ」が1位だった。2位以下は先週同様にイスラム国関連の記事がよく読まれている。
女性自身の記事は脱原発に逆効果
さて、今回は18位に入った内科医・越智小枝さんの記事「世界で最も食文化が進化し始めた福島」を取り上げたい。
実はこの記事が出る直前に、女性自身が原発問題で扇動的な記事「東電支援の福島"洗脳シンポジウム"ルポ!」(3月3日号)を書き、JBpressに示唆に富んだ記事を連載してくれている越智さんを原発推進派と勝手にレッテルを張り一方的に批判しているからである。
越智さんのこれまでの記事を文末のお勧め欄にいくつかリンクしておくので、まだお読みでない方はこの機会にぜひ目を通していただきたいが、深くきめ細やかな思索が特徴的な非常に質の高い記事ばかりである。
ロンドンから被災地に赴任した内科医として、福島という日本の地方の、それも世界にも例のない大津波と原発被害を同時に受けた地域をグローバルな視点で見られるのは、地理的条件からどうしても近視眼的になる日本にとって貴重である。
また、目に見えない放射線の影響を敏感に感じ取れる女性という視点も大切だ。
越智さんの記事からは、被災地がどのように葛藤し明日に向かって力強く生きようとしているかが伝わってくる。それは、原発推進派と反対派の対立などという単純なものでは全くない。
そもそも、そんな単純な見方しかできないのは、被災地のことを何も知らず、上から目線で自分の意見を押しつけたいからではないのか。
私自身は、原発の再稼働に反対である。地熱やバイオマスなど豊富なエネルギー資源に恵まれ、地震などの自然災害が多い日本には使用済み核燃料の処理が困難な原発は不要だと考えている。
しかし、原発を大量に造り、何千年、何万年と放射線を出し続ける放射性廃棄物を山のように生み出してしまった過去は消し去れない。
使用済み核燃料の処理と原発を安全に廃炉させるための技術革新は、原発事故を起こし地球を汚染してしまった技術立国・日本の面目に懸けても取り組まなければならないテーマだろう。それは原発の即時撤廃を叫んで解決できる問題ではない。
越智さんは「世界で最も食文化が進化し始めた福島」の記事で、極めて丁寧にそして慎重に被曝と日本の食文化について書いている。日本を原発推進派と反対派に二分させるようなステレオタイプの記事とは次元が全く違っている。
おそらく日本はいま、原発から再生エネルギーへと舵を次第に大きく切っていく過程にある。そうした時に求められるのは、越智さんのような真摯な思索である。
原発推進派を批判するために原発問題を丁寧に扱っている人まで巻き添えにして叩くようなことは、無差別テロに近いと思う。テロとは窮鼠猫を噛むような状態のときに起きるものだとすれば、日本の大きな流れを見誤っているような気がする。
原発を起こした東京電力を叩くのではなく、電力会社の中で最初に脱原発に向かわせるような努力こそ、原発に反対する人たちに求められているのではないだろうか。