韓国の銀行や証券会社など金融界で、朴槿恵(パク・クネ=1952年生)大統領の母校である西江(ソガン)大学のOBが躍進中だ。前政権でも、大統領の母校出身者が銀行トップに続々と就任したが、似たような現象が起きてきた。
2014年12月30日、韓国最大手のウリィ銀行は株主総会を開き、トップである銀行長(頭取に相当)の交代人事を決める。
銀行長に就任するのは李廣求(イ・グァング=1957年生)氏。銀行マン一筋で、ウリィ銀行副銀行長(個人顧客本部長)を務めていた。57歳の副銀行長が銀行長に昇格するだけなら、一見すれば何の不思議もない。ところが、今回の人事は金融界でも「サプライズ」だった。
というのも、現職の李舜雨(イ・スンウ=1950年生)銀行長は、堅実な手腕を発揮しており、11月までは金融界では「続投は確実」との見方が圧倒的だったのだ。
ところが、11月の半ばころになって、「留任は難しい」との見方が浮上してきた。さらに11月終わりから12月初めにかけて、急に「李廣求氏が後任の銀行長に内定した」という情報が駆け巡った。
12月1日夕方、李舜雨銀行長は突然、役員や行員にメールを送り、留任せずに辞任する意向を明らかにした。
「政治金融」の幽霊――「西金会」とは?
「毎日経済新聞」は、突然の人事劇を報じた12月3日付の1面トップで「『政治金融』幽霊が徘徊――ウリィ銀行人選などに『見えざる手』が作動」というおどろおどろしい見出しの記事を載せた。
辞任に外部の力が働いたという見方だ。
直後に、「李廣求銀行長」が内定した。
「西金会の威力か・・・」
金融界やメディアでこうした驚きの反応が相次いだ。
「西金会」とは何か。「西江大出身の金融人の会」のことだ。西江大はカトリック系の大学でソウルの中心部にある。韓国では、延世大、高麗大に次ぐ私学の名門だ。とはいえ、産業界や金融界でさほど目立った存在でもなかった。
その西江大出身者が盛り上がったのは、朴槿恵大統領が1974年電子工学科卒の「同窓生」だからだ。