2014年6月4日、韓国で統一地方選挙が実施された。朴槿恵(パク・クネ=1952年生)大統領が就任してから1年3カ月あまりで初めての大型選挙だった。4月16日に「セウォル号」沈没事故が起き、その収拾作業に不手際が目立ったことなどで、一時は与党惨敗の声も出ていたが、ふたを開ければ与党は善戦した。選挙最終盤で、保守層の結集があったというのが専門家の見方だ。
韓国の地方選挙は、ソウル、釜山など主要市長選挙と9つの知事選挙、区長、地方議員、教育監(教育長に相当)選挙などを一度に実施する文字通りの「統一地方選挙」だ。選挙区によっては有権者は一度に7種類の選挙の投票をする。
選挙戦の焦点は、主要8市と9道の市長・知事選挙だった。改選前は与党セヌリ党9、野党新政治民主連合8(無所属1を含む)だった。4日の選挙の結果は、与党セヌリ党8、新政治民主連合9で、ほとんど変わらなかった。数字だけ見れば、野党が「辛勝」したことになるが、選挙戦全般を見ると、「惨敗」さえ予想された与党が最終盤に盛り返した。直前の世論調査で苦戦が伝えられた激戦地を次々と制し、「事実上は与党の勝利」と話す専門家もいるほどだ。
まずは選挙結果の中で興味深い点を紹介しよう。
ソウルでは市長選挙も区長選挙も与党が完敗したが・・・
最大の選挙区だったソウル市長選挙は、野党の現職である朴元淳(パク・ウォンスン=1956年生)氏が、56%の得票率で圧勝した。与党候補は、7選の国会議員で現代財閥創業者の6男、世界最大の造船会社である現代重工業のオーナー、韓国サッカー協会の元会長など数多くの肩書きを持ち、抜群の知名度を誇る鄭夢準(チョン・モンジュン=1951年生)氏だったが、43%の得票率だった。
朴元淳氏は圧勝で再選を果たしたことで、2017年12月の次期大統領選挙の野党候補「1番手」に浮上した。一方の鄭夢準氏は、「セウォル号」事故で与党に逆風が吹いている最中に息子が、事故の遺族らが大統領批判をしたことを「韓国人は未開だ」などと批判。これが世論の大反発を招き、さらに苦境に立たされた。これまでの保守系のソウル市長選挙候補の中でも、10ポイント以上の大差で敗れた例はなく、政治生命にも大きな打撃となった。
ソウルは他の選挙でも野党が圧勝した。25の区長選挙では、前回と同じく野党が21区長選挙を制した。
ソウル教育監選挙は、今回の選挙戦の最終盤で最も話題となった選挙で、進歩系候補が勝利した。ほとんど全国的な話題になっていなかったこのソウル教育監選挙だが、直前に大きな関心事になった。
この選挙で一貫して先頭を走っていたのは韓国では有名な保守候補だった。ソウル大法学部2年生で司法試験、3年生で外交官試験、4年生で上級公務員試験に合格した秀才で、ポスコの事実上の創業者である朴泰俊(パク・テジュン)氏の娘と結婚した。その後、離婚・再婚したが、本人は国会議員、弁護士、投資家として活躍を続けた。