2014年5月19日、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は、対国民談話を発表して、時に涙を流しながらフェリー船「セウォル号」沈没事故への政府のずさんな対応を謝罪した。
事故から1カ月を過ぎたが、韓国社会は多くの点で大きな影響を受けたままだ。
「今回の事故にきちんと対処できなかった最終的な責任は、大統領である私にある」
5月19日午前9時、青瓦台(大統領府)で対国民談話を発表した朴槿恵大統領は、こう切り出すと、深々と頭を下げた。主要テレビ局が生中継したこの会見には、大統領として政府の責任に一つのけじめをつけようという思いが込められていた。
声を詰まらせ、涙を流した「鉄の女」
24分間の談話発表の最後に、自分が犠牲になって他の乗客を助けようとした高校生などの名前を挙げた際には声を詰まらせ、ほほに涙が伝って流れた。
「鉄の女」として常に冷静沈着な朴槿恵大統領がこれまでに見せたことのなかった姿だった。
朴槿恵大統領は、事故発生以来、これまでに何度も謝罪の言葉を口にしている。
事故発生から14日目にあたる4月29日の国務会議(閣議に相当)。テレビカメラを前にした冒頭発言で、「事前に事故を予防できず、また、初期対応が未熟だった」などとして謝罪した。
ところが、この「謝罪」は強い批判を呼んだ。直前に遺族や失踪者家族に会った時に謝罪をせず、自分が任命したいわば「身内」である閣僚を前にして謝罪の言葉を口にしたことが「不適切だ」という世論の強い糾弾を受けたのだ。
その後、釈迦生誕法要の式典や、遺族などを5月16日に青瓦台に招いた際に謝罪の言葉を口にしていたが、「きちんと謝罪すべきだ」という声は日増しに強まっていた。
事故を起こした一義的な責任はもちろん、フェリー運航会社にある。にもかかわらず、どうして大統領の謝罪を求める声がこれほど強いのか。