サムスングループの李健熙(イ・ゴンヒ=1942年生)会長が自宅で倒れて病院に担ぎ込まれてから2014年6月10日で1カ月が経った。容態は良くなっているというが、「会長不在」が長期化する可能性が高まっている。
サムスングループの経営に「異変」はないものの、韓国の産業界や証券市場では、グループの再編や会長の子供たちへの経営権継承問題への関心がさらに高まっている。
「手足が少しずつ動き1日8時間ほど目を開けている」。サムスングループは6月9日、李健熙会長の容態についてこう説明した。一時のこん睡状態から脱し、回復に向かっているが、まだ意思疎通などはできない状態だ。
健康状態についてはこれ以上は分からないが、韓国の産業界は、韓国最大最強グループであるサムスングループの「総帥の病気」に大きな関心を持っている。
当面の経営は、グループ各社のCEO(最高経営責任者)を中心にこれまで通りこなし、大きな問題はないと思われる。だが、「ポスト李健熙会長」をにらんだグループの再編がさらに加速、産業界と証券市場では「経営権の継承とからんだサムスングループの大再編」として大きな注目を集めている。
産業界と証券市場を驚かせたサムスンエバーランドの上場発表
6月3日、産業界と証券市場はサムスングループの発表に驚かされた。レジャー、ファッション事業などを手がけるサムスンエバーランドが、2015年初めを目標に株式を公開すると発表したのだ。
サムスンエバーランドは、2013年の売上高が3兆2260億ウォン(1円=約10ウォン)、営業利益1100億ウォンだ。グループ内でも突出した規模や収益力の企業ではない。
だが、この会社こそが、サムスングループの支配構造の頂点に立つ事実上の持ち株会社なのだ。
サムスンの支配構造は極めて複雑だ。2012年に韓国の公正取引委員会がサムスングループの支配構造を1つの図にまとめて発表したことがある。子会社、孫会社、ひ孫会社への出資が複雑に入り組んで、一目見ただけでは何がなんだかさっぱり理解できない図だった。
サムスングループの支配構造をごく単純化して言えば、サムスンエバーランドがサムスン生命保険の大株主で、サムスン生命がサムスン電子などの大株主という構造だ。サムスンエバーランド⇒サムスン生命⇒サムスン電子という順で株を保有している。