クールジャパン機構(資本金401億円)は、「クールジャパン」関連産業を担う日本企業のグローバリゼーションを支援する官民ファンドである。

 本稿の前篇では、同機構が博多ラーメン店チェーン「一風堂」の運営会社、「力の源ホールディングス」(福岡市)に約7億円の出資と最大13億円の融資枠を設定、支援を決定した事例を取り上げ、日本企業のグローバリゼーション推進という政策課題について考察した。

「小さな政府」で経済成長した経験のない日本

 今、世界では1930年代の保護主義体制への反省から、世界平和のためには自由な貿易体制を維持していくことが不可欠であるとの認識で、米国主導の国際通商システムが構築されている。輸送・通信技術の進歩や貿易障壁撤廃が原動力となり、今、我々は「第2次グローバリゼーション」という不安定な時代を生きている。

 ところが、現在の日本は、1980年代に米国(レーガノミクス)や英国(サッチャリズム)から始まった「新自由経済主義」(小さな政府)という空気に覆われている面がある。規制緩和や政府部門の民営化等を通じて、市場に任せ、経済活性化を狙うものだ。

 そうした空気があると、政府が規制を加えたり過度に企業活動にコミットすることは批判の対象となりやすい。クールジャパン機構という官民ファンドによる今回の投融資も、必要性が本当にあるのかとの疑念や批判を受けやすい。

 ところが、日本では「小さな政府」や「規制緩和」によって経済成長した経験がまだない。逆に唯一の成功体験は、戦後、「大きな政府」の下で過度な経済格差を生むことなく高度経済成長を成し遂げたものだ。

 当時のビジネス環境を振り返ると、キーワードとして、産官連携、規制過多、重点産業への傾斜配分、高い税負担率等があろう。「小さな政府」とは真逆である。日本経済の歴史を振り返ると、心情的には、規制緩和や構造改革だけでは「失われた20年」が未来永劫に続くのではないか、という一抹の不安を感じでしまう。

 日本という国は15年以上デフレが続いても潰れない強固な社会に見えなくもないが、やはり中長期的な政策としては、当たり前に社会・経済インフラを整備し、社会・国民経済をできるだけ安定化させ、民間投資が活発に生まれてくるよう環境を整備することこそが重要ではないだろうか。

 クールジャパン機構という官民投資ファンドは一つのサポート・インフラだ。その運用は難しく投資業務の担当者の力量が高度に問われるものではあるが、政府が成功事例を作ろうとする、そのコンセプト自体はそれほど捨てたものではない。

 ただ、特定の企業が政策支援によりグローバル化で成長を実現した暁には、安易に日本国籍は捨てず、是非、「日本企業」として海外事業で得た利益を配当等で日本に還流していただきたいものだ。