中小事業者はグローバリゼーションの風潮にのまれず慎重に
「クールジャパン」という政府キャンペーンにおいて、日本の中小事業者への支援が取りざたされることがある。シンガポールのオーチャード地区の「ジャパンフードタウン事業」は、単独では海外進出が難しい中小外食事業者の海外進出の足がかりとなるもので、その一例だ。
しかし、中小事業者は海外事業に慎重になるべきだ。当然、中小事業者にとっても隣の芝生は青く見える。世の中の風潮で日本は人口減少だから駄目だと猫も杓子も言っているが、本当にそうなのだろうか。
一(いち)事業者が何をしても売上が確保できないほど、日本の需要は急激に減退しているのか。海外事業の取り組みは現状打開策を国内で必死に考えた上での結論なのか。中小事業者の特定の商圏内、あるいは、国内の他の地域で打てる策はないのか。立ち止まって冷静に検討すべきではないだろうか。
近年、グローバリゼーションの進展に伴い、国と国との関係が緊密となり軋轢も多くなっている。例えば、日本と中国は政府が「戦略的互恵関係」にあるが、一度、反日デモや紛争が発生すれば、中国に住む日本人(在留邦人総数:13万5078人、2013年10月1日現在)は人質も同然だ。
かつて「第1次グローバリゼーション」が辿り着いた結末は2つの世界大戦であったが、歴史上、グローバリゼーションによって国際関係が密接になると摩擦や紛争も起こり安いようだ。中小事業者の海外事業、特に2国間関係が悪化している国の場合は、それだけの覚悟も必要なのかもしれない。
中小事業者にとって海外事業はそう容易ではないはずだが、海外進出の入り口で手厚い政策支援を受けると、そのビジネス感覚が麻痺してしまうことがある。やはり中小事業者の海外展開に対する政策支援は特に慎重であるべきだ。
もし中小事業者が海外事業の支援プラットフォーム等を足がかりに、その後、独自に海外進出を図ろうとする場合、いったい誰が助けてくれるのだろうか。自力で海外事業を展開できる日本の外食中小事業者やクリエーターはどれくらいの割合でいるのだろうか。
せっかく足がかりを作っても、本格的に海外事業を展開するには、良いパートナー探し、各国の規制環境のチェック、資金調達等々、クリアしなければならない壁は多い。もし淡い夢(Asian dream)を語ることによりシンガポールあたりに日本の中小事業者やクリエーターらを集めるのであれば、その後の継続的なフォローアップも是非、お願いしたいものだ。