飢えたサルはなぜ長生きしたのか?
明らかになってきた長寿の体内メカニズム

エネルギー摂取制限と長寿の研究(前篇)

2014.12.12(Fri)漆原 次郎

体が若返るから長寿になる

――絶食をすると、どのようにサーチュイン遺伝子が活性化されるのですか?

古家 絶食を続けると、補酵素という物質の一種である「NAD+」がサーチュイン遺伝子を活性化させます。

 その後、脱アセチル化をする分子は、どちらかというと健康長寿につながる働きを演じるということが、ここ15年ほどで明らかにされてきました。

――サーチュイン遺伝子が活性化すると、どのような健康長寿の効果が見られるのですか?

古家 例えば、脳の病気関連では、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、体にとって要らないタンパク質が凝集する病気の改善などです。また、糖尿病については、肝臓、脂肪組織、骨格筋におけるインスリン抵抗性を改善します。さらに、心血管疾患系では、動脈硬化を抑制したり、心不全になるのを防いだりします。

 我々の実験では、飢餓状態にまではしていませんが、エネルギー摂取を適切な量に制限すると腎臓が“若返り”をして、加齢や糖尿病による腎臓機能の低下を抑えることが明らかになってきました。

――長寿になるというのは、若返りをするという意味が含まれているのですね。

古家 ええ。米国のウィスコンシン大学で続いている、アカゲザルを対象とした有名な研究もあります。

 アカゲザルの平均寿命はおよそ28年ですが、研究対象のアカゲサルたちに、生後8年の時点から、エネルギー摂取量を3割抑えた“腹七分”の食事を続けさせています。実験から20年経った時点で、通常の食事を続けさせたアカゲザルは半数が死んでしまったのに、“腹七分”のアカゲザルのほうは8割が生き延びています。

 普通の食事で過ごしてきたアカゲザルのほうは、毛が抜けたり皮膚がたるんだりしていますが、“腹七分”のほうは毛のツヤがよく、姿勢もピンとしています。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る