では、フランス風ショートケーキとはどんなものだろうか。実は、フランスにも「ショートケーキ」はあり、それはしっとりとしたスポンジ生地の間に、バタークリームとカスタードクリームを合わせた濃厚なムースで苺を挟んだものだ。よって、不二家がつくったショートケーキはあくまでスポンジ生地を使ったフランス「風」であって、そのものではなかったわけだ。
以上を考えるに、こういうストーリーは考えられないだろうか。
英米式のクッキー生地に生クリームと苺を組み合わせたショートケーキがまず日本に伝わった。その後、フランス風のスポンジ生地を使ったショートケーキも伝わった。日本では、もともとカステラに親しんでいたため、スポンジ生地の方が好まれるようになった。だが、デコレーションの素材はそのまま、英米式のクリームと苺が採用された。こうして、「スポンジ、生クリーム、苺」の日本式ショートケーキが出来上がった。
つまり、日本のショートケーキは、英米とフランスの両方から自分たちの好みに合うよう、アレンジしたものだったのではないだろうかというのが私なりの推理だ。
こうして日本人の舌に合うよう、昭和の初め頃に完成形がつくりあげられたショートケーキは、戦後の高度成長期を迎えた昭和30年前後に、広く一般に普及していく。
現在では、各ケーキ屋がスポンジのキメ細かさやクリームの口溶け、苺の種類やカット法など、様々な工夫を凝らして独自色を出しているが、「スポンジ、生クリーム、苺」の基本は変わらない。そして、様々なケーキが並ぶようになった今でも、ショートケーキは誕生日のケーキとして、あるいはクリスマスのケーキとし て、ハレの日の食卓を彩る主役であり続けている。
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