英米仏のいいとこ取りが生んだ日本式ショートケーキ

洋菓子の定番はどこからやって来たのか

2013.12.13(Fri)澁川 祐子

 そこには、おそらく、「元祖」とよばれるショートケーキの登場が関係しているに違いない。

かの老舗が売り出したのはフランス風

 1910(明治43)年に創業した「不二家」は、1922(大正11)年頃、「フランス風ショートケーキ」を発売する。1959年刊の『不二家 五十年の歩み』(不二家著、刊)には、このケーキについて以下のように記してある。

 <スポンジケーキ(カステラ)を真中から半分に切って、半分の方の上にはバタークリームの花型をチョンチョンと置き、その上に、スポンジケーキの残り半分を二つ切りにして、桃色や薄青などのバタークリームで色づけしたものを、斜めにV字型にのせた。(中略)不二家が使ったのは、四〇パーセント前後の液体生クリームをあわ立て器で立て、砂糖、卵黄とバニラを加えながらかためたホイップ・クリームで、バタークリームの本流。それだけに味がやわらかだった>


V字型、桃色や薄青などのバタークリームと聞くと、現在のショートケーキとはだいぶ違うものを想像するが、フレッシュクリームを使ったスポンジのケーキは、人々にとって新鮮に映っただろう。事実、この不二家のショートケーキはかなり売れたと、同書には書かれてある。

 また同じ頃、生クリームの製造も日本で始まった。1924(大正13)年頃、アメリカのデラバル社製の遠心分離式生クリーム製造機が輸入され、本格的な生クリームが国内生産されるようになったのである。

 こうしてショートケーキのおいしさが喧伝され、材料も手に入るようになり、世間でのショートケーキの認知度が上がっていったのだ。

日本独自のショートケーキから推測される“折衷志向”

 ここで、ちょっと戻って不二家の「フランス風ショートケーキ」という名前に注目してみたい。

 わざわざ「フランス風」と謳うからには、もともと別のものがあったと考えられる。それはおそらく、最初に文献に登場したのが「Derby short cakes(デルビー ショルト ケーキ)」というサクサクしたクッキー状のものだったことから考えるに、イギリスもしくはアメリカ風のショートケーキだったはずだ。

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