英米仏のいいとこ取りが生んだ日本式ショートケーキ

洋菓子の定番はどこからやって来たのか

2013.12.13(Fri)澁川 祐子

 そのことを頭に入れて、この本の「ストロベリー、リッチ、ショート、ケーキ」と「フルーツ、ショート、ケーキ」のレシピを読むと、従来通りの「サクサクした」生地ではなく、パウンドケーキのような生地だったと推測できる。つまり、明治時代後半には、スポンジ状のショートケーキがすでに登場していたのである。

「スポンジ、生クリーム、苺」は昭和になってから

 それ以降の文献を見ていくと、「サクサクした」生地のものも時折登場しながら、スポンジ状の生地を使ったものが大半になっていく。

 たとえば、1907(明治40)年『和洋菓子製法』(亀井まき子著、博文館)の「ストロベリー、ショートケーキ」では、スポンジケーキを焼いて、潰した苺を挟むとある。1912(明治45)年5月22日付朝刊の朝日新聞では、「苺ショートケーク」と題して、細かくスポンジの作り方を記したうえで、最後に苺を挟んで砂糖をかけるとある。

 興味深いのは、1918(大正7)年5月27日付の読売新聞で登場する「ストロベリーショートケーキ」の作り方だ。この記事では、古くなったカステラの間に苺ジャムを挟むと「大へん結構に頂けます」と、カステラの再利用法を指南している。

 これらの記事に共通しているのは、ショートケーキに必須のクリームの姿が消えていることである。この時期のショートケーキはクリームなしか、もしくは砂糖と卵白でつくるフォンダンという、ざらざらとした固い砂糖衣が使われているかのどちらかなのだ。

 文献のなかで、クリームがふたたび姿を現し、「スポンジ、生クリーム、苺」という現在の組み合わせが登場するのは、昭和になってからだ。

 1928(昭和3)年の東京朝日新聞5月14日付で紹介されている「いちごショートケーキ」では、本式な製法として、スポンジの上に苺とホイップドクリームを置いて、さらにスポンジを重ねるとある。また、同年に刊行された『お菓子の作り方百卅種』(主婦之友社編輯局編、主婦之友社)では、「ストロベリー・ショートケーキ」と題して、苺とクリームをスポンジケーキの間に挟み、さらに上にも飾りつける手順が詳しく書かれている。

 では一体、大正の半ばから昭和の始めにかけて、何が起こったのだろうか。

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