倒産から約2年8カ月で再上場を果たし、奇跡の「V字回復」と称えられるJAL。しかし、その復活劇に異議を唱える声もある。
JALは2010年1月、会社更生法の適用を申請し、倒産した。しかし、完全に解体されることはなく、国の管理下に入ることで飛行機を飛ばし続けた。金融機関は約5000億円の債権を放棄し、企業再生支援機構は3500億円の資金を投入した。あれだけの公的資金を突っ込み手厚く保護すれば復活するのは当たり前だ──。確かにそう捉えられても仕方がない。
しかし、『稲盛和夫流・意識改革 心は変えられる――自分、人、会社全員で成し遂げた「JAL再生」40のフィロソフィ 』(ダイヤモンド社)を著したダイヤモンド・オンライン編集長の原英次郎氏は、「JALの変化は“本物”だった」と言う。公的資金の投入だけで生き返ったのではない、JALグループの従業員たちの抜本的な意識改革があったからこそJALは再生できた、というのだ。
原氏は再生中のJALに足を運び、社内で何が行われ何が起きていたのかを約1年かけて取材した。本書はその取材内容をまとめたものである。原氏は稲盛和夫名誉会長、大西賢会長、植木義晴社長をはじめ延べ30人以上の社員に直接会い、生の声を聞いて回った。そこで間の当たりにしたのは、まさにJALグループ従業員たちの「心の改革」と呼べるものだった。
意識改革があって初めて仕組みが回る
──JALの改革はどういった点が「本物」だと感じられましたか。
原英次郎氏(以下、敬称略) 取材に入る前は、JALに対する先入観がありました。例えば、組合が乱立していて社内に一体感がない。倒産したのに支援を受けて事業が続けられており、社内の雰囲気は相変わらずで誰も危機感を持っていない、といったことです。稲盛さんが来ても、そういう会社の体質が簡単に変わるものかと思っていました。
けれども、従業員一人ひとりと実際に会って話を聞いていると、どうもイメージが違うんです。みんな、なぜ自分たちは倒産せざるをえなかったのかということを真剣に考えていました。また、一体何がいけなかったのか、それを受けて自分たちが何をしないといけないのか、ということを真摯に語ってくれました。これは、何か変化が起きつつあるのではないかということを感じました。
もう1つ感じたのは、JALの従業員たちが“自分たちがよって立つ何か”を手に入れたことで、迷いがなくなったということです。