今週は最近スタートさせた「日本の住まいを考える」企画をご紹介したい。日本の住まいと言えば、欧米とは違って機密性を重視せずに通気性が高い住宅だった。これは欧米が冬の寒さをしのぐように作られているのに対し、湿気の多い夏を快適に過ごす知恵でもあった。
この10年で大きく変化した日本の住宅
もうだいぶ昔のことになるが、当時は建設省傘下の研究機関だった建築研究所に取材して、日本の住宅は徒然草の頃からほとんど進化してこなかったと聞かされたことがある。
つれづれなるままに生きる日本人の生活スタイルが住宅に大きな進化を求めなかったというのである。
ところがここにきて、大きな変化が見られるようになってきた。2回の大きな震災の影響もあって耐震性が格段に向上。
こうした技術のおかげもあって住宅は20年から25年で建て替えるものという“常識”が過去のものとなり、50年あるいは100年持つ住宅が急速に増えてきた。
さらに湿気の多い日本でも住宅の機密性を高めて常に快適な温度と湿度にコントロールして生活しようという住宅が増えてきた。
建築研究所の研究主幹であり筑波大学の教授を務める岩田司さんは「日本の住宅はこの10年で圧倒的な変化を遂げ始めた」と言う。
機密性の高い住宅はエアコンによる空調が必須だが、太陽光発電や熱の循環システム、湿気だけを排出する外壁材といった技術革新で、極めて省エネで快適な住宅が作れるようになったというのだ。
岩田さんによれば、住宅の技術で進んでいた北欧など欧米の技術は冬の寒さを防ぐことが中心だった。しかし、その住宅は高温多湿の国では使いづらい。
日本で最近技術革新が進んでいるのは、冬はもちろんのこと夏の高温多湿にも対応しようというものだそうだ。しかも、そうした住宅を鉄筋コンクリートではなく、日本の山に豊富にある杉や檜などの木を使って実現しようという。
岩田さんは「皆さんはアルミサッシは機密性が高いと思うでしょうが、実は違うんですよ。アルミは温度の変化で簡単に伸びたり縮んだりするから、機密性はそれほど高くないんです。一方、木で作った窓は収縮しにくいから機密性が高い」と話す。
岩田さんによると、杉や檜を使った日本の新しい住宅は、高温多湿の東南アジアなどにも極めて向いているという。すでに、沖縄で実験も始まっている。
東南アジアは欧米のものを優れているものとしがちでコンクリートの家が多いが、日本の新しい住宅は高所得層を中心に販売が伸びる可能性は十分にあるという。
JBpressではこうした新しい住まいについて記事を配信していく予定。ご期待ください。以下は今までの記事。
「大規模災害から家族を守る日本の最新住宅」
「デフレも味方につけ急成長、遊休地活用ビジネス」
「進化し始めた日本の住宅:耐震性能が飛躍的向上」