米東部時間2月22日、懸案だった日米首脳会談がホワイトハウスで行われた。24日付中国各紙は、「安倍は訪米で冷遇された」「冷淡に扱われた」「米国は中国に遠慮して低調にした」などの見出しを掲げ、一様に安倍晋三首相の訪米を扱(こ)き下ろしている。
日本人にとって愉快な記事ではない。しかし、第三者の目から客観的に見ても、一連の中国側報道にはかなり違和感がある。そこで今回は、中国側の安倍訪米「冷遇」報道の内容を詳しく検証し、その真の理由を考えてみたい。
中国側の統一見解
今回の一連の「冷遇」分析は決して偶然ではなく、中国政府の統一見解だと思う。人民日報、新華社から新京報まで、ほぼ同じ趣旨の記事が掲載される場合には何かがあるはず。恐らく2月23日の段階で国務院新聞弁公室あたりから「指示」が出たのだろう。
「指示」自体は驚くにあたらない。興味深いのは、むしろその判断・分析の幼稚さだ。以下に、「安倍首相の訪米“冷遇”される」と中国側が判断した根拠を列挙してみよう。ご一読のうえ、どの程度説得力があるか考えてみてほしい。
それぞれには筆者の反論も付記してある。ちなみに、以下のコメントは決して「独断と偏見」ではない。これらはすべて、外務省時代北米局と在米大使館で合計10年間、日米関係に関わった筆者の具体的経験に基づくものだ。
●意外なことに今回(の安倍首相訪米)は一国の政府首脳の公式訪問だというのに、米側は冷淡だった。会談時間は短く、共同記者会見や晩餐会もセットされなかった。
【安倍訪米が可能だったのは2月下旬の数日間だけ。日本の国会日程上、これ以外の選択肢はなかっただろう。「財政の崖」問題で極めてタイトな日程の中、ホワイトハウスは日本側要求を受け入れ、昼食も含め2時間近くを安倍首相の実務訪問のために割いた。これは「冷遇」どころか、「厚遇」の部類に属する】
●通常共同記者会見は生中継されるはずだが、今回は、あり得ないようなくらいに簡単に報道され、ホワイトハウスのホームページや米国のニュースチャンネルも生中継していない。
【共同記者会見は2国間の重要発表事項がある場合に開かれる。今回両首脳は初顔合わせでもあり、通常なら「首脳会談冒頭のカメラ取材」というのがワシントンでの相場観だ。今回ホワイトハウスが会談と昼食の間にメディア取材を認めたことの方がむしろ異例である】
●記者団との短い会見で質問は2つだけ、その1つは、米財政支出の自動的削減についてだった。米国では「日帰り旅行のようで慌しくて注目されていない」と評価された。
【米国のメディアは森羅万象を取材する。彼らは外国要人との共同会見でも平気で米国要人に内政問題を質問するし、それが失礼だとも考えない。これがワシントンの常識だ。中国側がそれを知らないはずはないのだが。もしかしたら、本当に知らないのかもしれない】